Fourth feel—マサト

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「でも、お前は違うじゃないか。行動に起こして、実現しようとしてる。それは、自分の満足のためだけじゃない。水みたいに、誰かの乾いた心に染み込んで潤すようなメッセージが、そこに込められてると思うんだ。……お前ならやれる!自信持てよ」 「……違うぜ、ナル」僕はそこまで聞いて、ようやく口をはさんだ。「お前が、いつも助けてくれたからなんだ。ガキの頃から、お前が必ず味方になってくれたから、そんな生き方が出来たんだよ。俺が下手やらかした時も、必ずかばってくれた。高校の頃に親父が亡くなった時だって、ずっとそばで励ましてくれたろう?今回だって、お前がいなきゃ、こんなイベントやろうとしないさ。……俺の背中を押してくれるのは、いつだってお前だったんだ」  そう言った僕が残りのビールを飲み干すのを待ってから、ナルはまた口を開いた。 「……俺が、マドカに告白したいって言った時は、お前が背中を押してくれたんだぜ。自分の気持ちを隠してな」  ナルは、時々思い出したようにその話をする。 「その事はもういいって。俺は、お前だったら仕方ないと思って、気持ちよく身を引いたんだからな」  それは本当だった。遠慮したわけじゃない。  ナルなら……。ナルだったら、きっとマドカとうまくやれる。マドカを、任せられる。そう思ったんだ。 「とにかくさ」ナルが枝豆をつまみながら言う。「お前がやろうとしてることは、きっとみんなの心に届くから安心しろよ。……ただ、お前は結構無理するからな。それだけが心配だ。無理せず、気長にな。それだけは約束してくれ」  ナルの言葉に、僕はピリ辛きゅうりを口に運びながら頷いた。 「そうだな……わかった。ありがとな、ナル」  そう言ったところで、例の店員さんが唐揚げと生春巻きを持ってやってきた。 「お待たせしましたー」  僕はそれを合図に、二杯目のビールを注文した。まだ酔ってもいないのに、不思議と、今までにないくらい美味い酒に感じていた。
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