Fifth feel—マサト

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「そうか。皐月の演技は何かが憑依してるような迫力があったから、俺も一目置いてたんだがな。……役者の引退は勿体無かったが、お前はやれる奴だ。何か違う形で、センスを発揮できると思うぞ」  竜崎さんはそう言うと、控室のテーブルに置かれたウイスキーのロックを飲み干した。 「は、はい!僕なんかには勿体無いお言葉です、ありがとうございます」  さっきあれだけのパフォーマンスを見せた人から、まさかそんな心強い言葉を貰えるとは思ってもみなかったので、僕は思わず目頭を熱くさせかけた。 「今度の同窓会イベントに協力するのも、同情なんかじゃない。お前を認めているから、協力するんだぞ。そのあたり、勘違いするなよ」  ジャックダニエルをトクトクとウイスキーグラスへ豪快に注ぎながら、竜崎さんが言う。ナルも、似たような言葉をかけてくれた事を思い出す。 「はい、本当に感謝してます。竜崎さんのペイントとヒカリさんのダンスが、僕の同級生バンドとコラボしてもらえるなんて……まだ信じられません。楽しみで仕方ないです」 「皐月からは、アーティストへのリスペクトを感じるからな。ヒカリもお前の演技力を認めてたし、そのあたりの事も伝わってるから、きっと引き受ける事に決めたんだと思うぞ」  竜崎さんがそう語っていると、ちょうど控室にダンスの熱気をわずかに残したまま、ヒカリさんが入ってきた。 「ああ!皐月さん。今日はお越しいただきありがとうございました。……その後、お加減はいかがですか?」  ヒカリさんは少女のようの屈託ない笑顔で、そう声をかけてくれる。 「素晴らしかったですヒカリさん、お疲れ様でした。おかげさまで、なんとか元気にやってます」  僕の言葉に、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しながらヒカリさんが答える。 「それは良かったです。日程、4月の最終日曜に決まったんですって?」 「ええ、色々と今準備に動いているところです。水をテーマに、イベントのディレクションをさせてもらおうかと思ってます」
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