Six feel—マサト

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「怪我って、役者を辞めるほどの大怪我だったのか?そりゃあ、大変だったな……」電話の向こうでコウヘイはにわかな動揺を隠さなかったが、すぐに言葉を続けた。「でも、お前のことだ。何かしらの目標を立てて帰ったんだろう?」  お見通しだぞ、と言わんばかりの口調に、僕は笑った。 「はは、敵わないなお前には。……実は、その件で連絡したんだよ」僕は改札を抜けながら、要件を伝えた。「4月の終わりに、同窓会ライブイベントをしようと思っててさ。コウヘイにも、ボーカルで出演して欲しくて」  行き交う地下の雑踏をかき分け、ホームを目指す。週末の夜だけあって、駅構内はなかなかに混雑していた。 「同窓会ライブか……。いいな、なんか面白そうじゃん。ちょうど春にはまとまって休みが取れるから、久しぶりに日本へ戻るつもりだったんだ」  僕は、嬉しい誤算に驚いて答えた。 「本当か?イギリスにいるって聞いてたから、半ば諦めてたよ。ぜひ、引き受けてほしい」 「慌てるなよ。日程が合うとは限らない。それに、俺が戻れなくてもお前が歌えばいいじゃないか」 「……俺が歌を?バカ言うなよ、カラオケぐらいでしか歌ったことないんだぜ」 「何言ってるんだ。中学の頃にバンド組んだ時、最初のボーカルはお前だったじゃないか」  コウヘイがそう言った時、目の前で凄い音を立てながら、快速電車が横切っていった。 「俺が、最初のボーカルだったって……?」  僕は虚を突かれたように、コウヘイの言葉を繰り返した。 「ああ。お前がすぐに辞めちまって、俺がギターボーカル担当になったけどな。……覚えてないのか?」  僕は、言葉を失った。まったくそんな覚えが無かったからだ。 「俺はお前のボーカル気に入ってたんだけどな。まぁ、結局はそれが、俺が歌をやり始めるきっかけになって今があるんだけどよ」
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