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「ナルのことさ。……白血病を患ってたって。話すタイミングが無かったって言われたけど、それじゃあまりに……」
僕は突然の言葉に耳を疑った。
「ナルが……白血病だって!?」
あまりの報告に、心臓が大きく脈打ち始める。
「な、なんだよ。まさか、マサトも聞かされてなかったのか?」
「もちろんだよ!知ってたら、同窓会の件だって協力してもらうもんか!」
僕はまくしたてるように言った。わけがわからなかった。自分の病気の事で頭がいっぱいで、まさかナルが白血病を抱えているなんて夢にも思わなかった。
「そうだったのか……。いいか、マサト」サトシはそこまで言って、一旦言葉を切った。「……落ち着いて、俺の話を聞いてくれ」
ただ事ではないサトシの様子に、僕は全身の血の気が引いていくのを感じた。
「さっき、ナルが病院で息を引き取ったそうだ。ナルは治療を続けながら、日常生活する事を選んでいたらしい。ドナーも、適合する人が見つからなかったんだってさ……」
サトシがそう言った時、僕の目の前を、たくさんの乗客を乗せた電車がゆっくりと横切り始めていた。
「……嘘だろ、サトシ……。ナルのやつ、あんなに元気だったのに……。つい先週も、一緒に飯食ったばかりなんだよ!」
周囲に人がいることも気にせず、僕は喚き散らした。
「お前の前だから、無理してたんじゃないのか。店も、しばらく前から開けてなかったらしい」
そんな、バカな。ナルは、何も言ってなかった。
いや、そうじゃない。僕が自分のことばかりで、ナルの異変に気付いていなかったんだ。ナルは僕の病気の話と同窓会イベントの話を聞いて、自分の病気の事を言えなかった……。
そんな、そんなことって……。
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