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死んだものはどうしようもない。
どうしようもないとはちっとも思ってなさそうな目で鷹一郎は俺をみる。だがしかし、確かに『死んだ』と言われればそれ以上はどうしようもない。諦めもつく。墓でも拝ませてもらって……。
「墓?」
「おや、哲佐君にしては珍しく鋭いですね」
「うるせぇ。墓がねぇのか? 千代の死因は?」
「全身打撲ですねぇ。転落したそうです。あのあたりも崖はありますからそれでしょうか?」
妙にあげつらうかのような口調。死んだってのに不謹慎なやつだな。いや、真実に死んだかどうかはまだわからないのか?
この辺りの風習は土葬だ。
お上は火葬を命じたり禁じたりとふらついてるが、今は伝染病なら火葬は絶対。だがそれ以外は自由のはずだ。事故死なら必ず墓が立つだろう。墓がないということは死んでいない?
なら何故隠すんだ。
「さてどうでしょう。他にも『存在しない』ことにしたい理由はいくつか思い浮かびはしますが、あとは現地を確認してからですね。それでそもそも私たちはどこを探せばよいのでしょう」
「逆上村の桜林だろ?」
鷹一郎は丁寧に団子の皿を脇に寄せて机の上にガサガサと地図を広げる。地図の中心には逆城神社があり、その北西部に逆上村という表記があった。逆城神社を起点にすすすと鷹一郎の指が動く。
「ここの参道の途中に梅林に向かう道があります」
「そうだな」
「そして梅林の少し先に逆上村がありますね。さて桜林はどこでしょう」
「桜林だと?」
地図には確かに『逆城梅園』という表記はあるが、桜林という表示はない。その周辺に目を動かしてみても、杉林や桃園という記載はあるが、確かに『桜』という記載はないようだ。だが俺にはそれが取り立てておかしいとも思えない。
「書いてないことだってあるだろ?」
「ではどこを探しましょうか」
「どこって……その赤矢とやらに聞くしかねえんじゃねえか」
「そうですね。丁度いらっしゃいました」
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