エピローグ

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エピローグ

 河野智子はダイエットの効果が出てきたと自分では思い込んでいたが、実際にはどんどん体重は増加していた。どうやら夜中、半ば無意識にポテトチップスやら菓子パンやらをドカ食いしていたらしい。「思い込みの激しい性格で……。止めようとはしていたんですがまさか人様に迷惑をかけるようなことまでするなんて」と夫は供述しているらしい。精神的にもおかしくなっていたのだろう。彼女の目にだけは瘦せて綺麗になった自分が映っていたのかもしれない。 「それにしても巻き添えで香織が異動になっちゃうなんてね」  事件に伴う人事異動で香織は今日から一課に配属となった。 「智子がやってた仕事がわかるのは私しかないし、二課にはあんたがいるからね。ま、隣の課なんだしこれからもよろしく」  香織は智子が座っていた机を念入りに掃除して座った。ここから智子は課長を見てたんだな、と思いながら視線を課長に向ける。相変わらずの良い声で部下に指示を出していた。香織はそっと心の中で呟く。 (ああ、邪魔者は全部いなくなった。これでようやくキーキー声の上司に妨げられることも、デブな同僚に遮られることもなくこの声を聞くことができる。そう、やっぱり私は……) ――この声が好き。 了
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