2.ダイエット

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「あ、課長そろそろ時間ですね」  そう言う私の声に被せるようにして坂本が声をかけてきた。 「宮坂くぅん、いこっか」  え? と思わず声が出そうになった。そうか、この出張は本社で三日間行われる課長会議のため。坂本も出席するのは当たり前だった。 「おお、向こうでランチでもするか」  笑い合う二人を見て思わず妄想する。宿泊先のホテルで二人が同じ部屋に入っていくところを。重なり合う唇、熱い吐息を。私はギリリと唇を噛みしめて二人の後ろ姿をいつまでも見ていた。  その日私は憂鬱な気分で仕事を終え、帰宅してからも妄想に苦しめられた。 (今頃二人は……)  妄想はどんどん具体的に、そして淫らになっていく。 「おい、夕飯はまだか?」  夫の間の抜けた声に苛々しながら夕飯の支度をする。 「私は食べないから、勝手に食べて」 「またダイエットか。ちょっとは食った方がいいんじゃないか?」 「いいの! 放っておいて」  職場で何か言われたのか? と笑う夫を無視していると「やれやれ、お前は思い込みが激しいからなぁ。誰も五十過ぎたオバサンの体型なんて気にしてないさ」と鼻で笑われた。 「うるさいっ!」  こうなったら本格的にダイエットだ。私は心に誓った。
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