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3.嫉妬
「ねぇねぇ、宮坂くぅん、今度一課二課合同で飲み会でもしない?」
「おお、いいねぇ」
坂本と課長の会話が聞こえてくる。何であんたんとこと飲み会しなきゃいけないのよ、と私は苛々しながら耳を澄ませた。
「ねぇ智子、なんか一課二課合同で飲み会するみたいね。参加するでしょ?」
昼休みに香織に尋ねられ渋々頷く。あの女の顔なんか見たくもないが自分のいないところで課長にベタベタされたらたまらない。
(課長だって迷惑なはずだもの)
飲み会は皆の予定に合わせ翌週行われた。
「はーい、籤引いてくださいね」
香織が面倒そうに籤引きを促している。
(課長の隣が引けますように)
そう願いつつ籤を引く。
(うわ、最悪)
課長は課長でも坂本課長の隣だ。香織が「あーあ」と小さく呟いた。私は仕方なく席につき乾杯の後坂本と会話を交わす。香水の匂いが鼻についた。
「あら、河野さん何も食べないの?」
「ダイエット中なもので」
さっきからお酒しか飲まない私を坂本は訝し気に見ている。
「ダイエット……。でも少しは食べないと逆によくないんじゃないかしら」
私は悟った。この女は私が綺麗になって宮坂課長と仲良くなるのを邪魔しようとしているんだ。そうに違いない。
「いいんです、放っておいてください」
坂本は呆れたようにため息をつくと席を移動していった。隣にほろよい加減の香織がやって来て座る。
「ねね、うちの課長と何か話した?」
「別にぃ。何か食べろっていうから、ダイエット中なんでって断っただけ」
「あはは、そっかぁ。あ、うちの課長ちゃっかり宮坂課長の隣に行ったよ」
ハッとして視線を上げる。坂本は親し気に課長の肩に手を置きキャハハと笑っていた。
(課長、迷惑そうにしてるのに。気付きなさいよね)
苛々しながらぐいっとビールを飲み干す。
(あの女は邪魔だわ。そうよ、課長のためにもあんな女……)
――いなくなればいい。
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