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4.真実
それから三か月後、会社は騒然としていた。社員同士の刃傷沙汰が起きたのだ。
「ねぇ香織、あなた河野さんと仲良かったでしょ? びっくりよね」
二課の女性社員である黒田美咲が私を慰めるように言う。
「ええ、少し様子がおかしいとは思ってたけどまさかあんなことするなんて、ね」
河野智子は帰宅途中の坂本課長に背後からナイフを突き立てた。坂本は幸い軽傷で済んだがしばらく休職すると聞いている。
「でもどうして隣の課の課長を刺したりしたのかしら。本人は黙秘してて理由は全くわからないみたいだけど。ちょっと精神的にも不安定みたいね」
「うん、最近ちよっと目付きおかしかったよね。ダイエットのせいかなぁ」
「ダイエット?」
美咲が素っ頓狂な声を上げる。
「うん、ちょっと前からダイエットしなきゃって昼も抜いててさ。せめてビタミンだけでも取りなってサプリ勧めたんだけど、本人はダイエットのためのサプリだって思い込んで飲んでたみたい。何度もビタミン剤だって言ったんだけどなぁ」
「いや、ちょっと待ってよ。河野さんダイエットしてたの? 信じられない。だって最近河野さん……」
――めちゃくちゃ太ってなかった?
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