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無風
11月某日未明。
まだ暗い中、プロジェクトの準備は着々と進んだ。
「古田さん。2時間前です」
「あ。はい。あやちゃん、電気系統の最終チェックは?」
「さっき、電気担当の稲葉さんから連絡が入りました。問題なしだそうです」
木造住宅が並ぶ中、古田さんの自宅である鉄筋三階建ての3階が、中央指令室となっていた。畳敷きの床の上に今は、プロジェクトリーダーで宇宙物理学者の古田さん、エネルギー物理学者の池山さん、航空工学者の真中さん、パイロットの宮本さんが、テーブルを囲んで胡坐をかいて座っている。私は主にノートパソコンを前に、プロジェクトの最終チェックを行う外の人たちとの連絡係をやっていた。
「気象状況はどうかな?おじいちゃんに聞いてきてもらえる?」
「はい」
私は階下に降りた。祖父は、古田さんの家の二階のキッチンに自分のパソコンを持ち込んで、気象状況の分析を行っていた。
「無風。しばらく変わんないね。大丈夫」
「はい。じゃ。報告してきます」
「その必要はないよ。おーい。古田さーん、無風だよー。だいじょうぶー」
あはは、そうだよね、家の中だもん。大きな声を出せば聞こえる。
「はーい」
ははは。
「実行まで2時間か。少し、休もう。座って」
「でも」
「大丈夫」
「あの。おじいちゃん。どうしてこういうことになったのか、聞いてもいいこと?」
「あ。かまわないよ」
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