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古田さん
久々に会う孫娘を前に、かける言葉に困っているような祖父の様子では、私は歓迎されていないようだった。
「ごめんなさい。私」
「いや。あのな。あや」
その時、奥の間が開いて、障子の隙間から眼鏡の老人の頭がのぞいた。
「どうしました?辻さん」
私はこの人を知ってる。
畑だったここが宅地となり、祖父がこの土地に移ってきたときに同時に移り住んできた確か。
「あれ?あやちゃん?」
私の名前を知ってる。
そうだ、古田さん。有名な宇宙物理学者だ。
「こんにちは」
「あはは。立派になった。大人だ」
こんなにやってることは子供なのに。恥ずかしい。
「お医者さんになったって聞いたよ」
「あ。はい」
胸を張れないのが苦しい。
「あのな。古田さん。ちょっと席外していいかな。二階であやと話す」
「はいはい。ごゆっくり。じゃ、話はすすめておきますから」
「頼みます」
祖父は私の顔を改めて見て、ゆっくり笑ったのだった。
昔と同じ優しい笑顔。
「ようこそ。あや。久しぶりだね。なんかあったような顔だよ」
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