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特捜部というと、政治家、高級官僚の汚職や経済事件などの重大事件だけを扱う部署だと思われがちだが、五味が任されたのは、直告係で受け付けた、「直受(ちょくじゅ)」という一般人から直接検察庁へ告訴・告発された事件である。
これらの事件は、刑事事件としての立件が微妙な内輪揉めに近い民事事件の要素が絡んだ事件が殆どなのだ。
直受は、地方検察庁(略して地検)の捜査専門部署である“特捜部”(東京、大阪、名古屋以外の都市にある地検では刑事捜査部)が受理し捜査を行うのであるが、他の特捜部エース検事たちは普段、国税局、証券取引等監視委員会、公正取引委員会などが調査した脱税等の犯則事件の告発処理で手一杯なことと、やはり、政治家や大企業の幹部が絡む汚職事件といった、ニュースバリューの高い重大事件でない限り、なかなか捜査に乗り出さないというのが実情である。
そんな特捜部のエース検事たちが扱わない地味で目立たない事件を扱うのが五味の仕事である。
でも、被害者に寄り添う検事を信念としている五味にとって、この任務は大変にやりがいのあるものに感じられた。
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