特捜はぐれ検事 ゴミケン

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 着任早々、五味のデスクへ立会事務官の作田志都治(さくたしつじ)が、直受案件を抱えやって来た。  この作田志都治、年齢は58歳。頬はこけ、銀縁の丸眼鏡にロマンスグレーの髪をきっちり七・三に分けた紳士で、定年まであと2年の万年検察事務官ではあるが、一流の執事の様な気品と誠実さを持った男で、名古屋地検の同僚から“執事”と渾名されている。 「五味検事、早速でございますが、直告係からの直受案件をお持ちいたしました。これが、なんとも検察に告訴してくるには珍しい事件なのでございます」  作田は怪訝な面持ちで、五味のデスクの未決箱に直受案件資料を入れた。 「おっと、その前に、ダージリンティーでもお淹れいたしましょう」  作田はそう言うと、手際よく検事室内にある電気ケトルでお湯を沸かし、温めてあったティーポットに茶葉を入れ3分蒸らした。 「ダージリンティーは、収穫時期によって茶葉の色や紅茶の色が大きく異なるのでございます。これは、ファーストフラッシュといって、収穫時期が3~4月のもので、爽やかで若々しい風味とほどよい渋みが楽しめます。茶葉本来の香りを楽しむためストレートでお飲みくださいませ」
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