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この女主人、名前を安井希代(やすいきよ)といい、年齢は84歳。元々、夫がやっていた質屋なのだが、10年前に先立たれ、子供がいないことから、今は独りで質屋を切り盛りしている。
その訴えというのは、最近、店に保管してある客から質にとった品物(質物)が、自分の留守中、頻繁に盗まれるという被害が出ているというのだ。
五味は、この直受資料に一通り目を通すと腕を組んで目を瞑った。
「五味検事、この告訴人に話をして警察へ盗難の被害届を出させるよう促しますか?」
作田は、侵入窃盗事件を検察に直接訴えてくるのはお門違いだと言わんばかりの言い方だった。
「作田さん、侵入窃盗事件を検察に訴えてくるということは、もうすでに警察には被害届を出しているのではありませんか。つまり、警察では埒が明かないから仕方なく検察の方に訴えてきた、ということではないのでしょうか・・・」
「だ、だとしても、被疑者不詳ということは、検察の方で犯人を割り出し逮捕しなければならないということでございますよ。まさか、侵入窃盗事件を素人同然の検察で捜査すると言うのでございますか?」
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