ファインド・ダ・アンサー

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 先ほどと同様に足を思い切り伸ばすと、消しゴムの先の地面まで線引きが届いた。いけると確信した俺は、先生の視線に細心の注意を払いながら消しゴムに触れた。  しかし思わぬ事態が起こる。いや、冷静に考えればわかったはずだ。足先、それも片足のみで行う線引きの扱いの難しさは、俺の足にかなりの負担をかけ、ついに俺は、足がつった。 (ぐああああああああああっ!!)  なんてことだ。せっかく光明が見えたってのに!  俺の絶望を知ってか知らずか、解答を終えた周りの奴らがクスクスと笑い声をあげる。その中には佐藤の声も混じっていた。 (許せない。あの野郎だけは絶対に許さない)  なんて怒りの炎が再び俺の心を支配したのも(つか)()、恐るべきことに事態は急変する。 「……山田? 何をしてる」  周りの笑い声で意識を取り戻した先生が、奇妙な行動をとる俺に気付いてしまった。  足で線引きを操る俺に顔をしかめる先生は立ち上がる。そして俺の希望の星だった消しゴムを手に取り、怪しいところはないかとチェックし始めた。  おわった。これで数分のうちにたてた計画がパアだ。  さよなら点数。さよなら小遣い。こんにちは低評価。これからもよろしく。 「なんだ、消しゴム落としただけか。こういう時は手を上げて知らせなさい」 「え?あ、はい」  しかし俺の予想に反して、先生は怒るでもなく、なんでもない顔をして消しゴムを手渡してくれた。  どういうことだ。先生は確かに中身まで確認していたはずだ。消しゴムの雑にくり抜かれた穴の中に、カンニングペーパーが入っているはずなのに。  俺は前の席の子を隠れ(みの)に、消しゴムのカバーを外した。  するとそこには俺が用意したはずの消しゴムとは違う、傷のない綺麗な消しゴムが入っていた。  俺は不思議に思い、佐藤を見る。佐藤はニヤリと笑って、自分の持っている消しゴムのお尻を指さした。それに従って消しゴムに目を落とす。  (あ!)  よくよく見るとそこには四角い切れ目が入っていた。それも切れ目の傷部分に白い消しカスが埋め込まれ、平たんになるように多少削られている。パッと見ただけでは見つけられないほどの出来だ。  そうか! こいつ、テストを早めに終わらせて、余った時間をこの仕掛け作りに充てていたのか。自分が狙いを外し、消しゴムが先生に発見されることを見越して。  どうりで、佐藤にしては解答に時間がかかっていると思った。  驚きと感心で胸がいっぱいになり、俺は感謝を伝えようと後ろを振り返った。だが、佐藤は気にするなと言わんばかりに首を振り、黒板の上の時計を指さした。  残り時間は五分を切っていた。俺は消しゴム中身をシャーペンの先で穿(ほじく)り出して、夢中で答えを書き殴る。 (残り時間もあとわずか、この数分に俺のすべてをかける!) こうして俺たちの一時間近く続いた戦いは、幕を閉じたのだった。    
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