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「彼氏と別れました」
昨晩届いていた姪からのメールに、それだけが記してあった。
つい先日まで楽しそうだったのにどうしたのかと聞くと、夕方に長文の返事が届いた。
中学二年生の姪と相手の少年は、お互いが初めての恋人だった。
最初の数ヶ月は、二人で過ごす毎日の時間が楽しくて仕方ない様子だった。
私が反応に困ってしまう様なのろけ話がほとんどだったが、幸せそうに語る報告を、概ね楽しく聞かせてもらっていた。
しかし幼い恋人たちの間には、ほんの少しずつ、静かにそして確実に、変化が訪れていた。
それまでの二人は、何でも気軽に話せる仲の良い異性の友達だった。しかし今は恋人なのだ。
共に過ごす時間は長くなり、相手の事がはっきり見えてくる。
新たな魅力の発見に心踊る時もあれば、価値観や感性の違いから、理解できない事もある。
そのを全て受け入れるには、二人の心は幼すぎたのだ。
今までと微妙に異なる相手の反応、心情や言葉の些細な変化。日々の様々な事が、二人の間に僅かな違和感を生み出していった。
それでも姪は恋仲でいたかったのだが、 ついに昨日、 恋人であった少年から別れを告げられ、ひとつの恋は終わりを迎えた。
メールの半分以上は、元恋人への愚痴だった。 私は最後まで読んだ後
「これで君は、 昨日までよりもっと素敵な女の人になったから、今度はもっと素敵な恋人ができるよ。 だから、大丈夫」
という、ありきたりな返事をした。
暫くして 届いた返事は
「そうだね。 じゃあ、今度おじさんと会う時には、今よりもっといい女になってるから、驚かないでよね。」
それは別れた元恋人に言う台詞であって、恋愛の相談相手でしかない叔父に言うなど、かなりの見当違いだ。
私はそう笑ったが、 ふと脳裏に浮かんだ女性の顔に、いつかの記憶が呼び起こされた。
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