86人が本棚に入れています
本棚に追加
「要?」
「…本当に、いいのかな。私で」
「どうして?」
向きを変え、修ちゃんは私の正面に来るように座り直した。
その表情はひどく優しい。
「だって、修ちゃん本当は子供だって欲しいんじゃない?それなのに……」
俯いたまま、それ以上彼の顔を見ることができなかった。
私は子供を欲していない。
決して子供が嫌いな訳ではない。自信がないのだ。
人ひとりをこの世に産み放ち、そこから大人になって一人で生きられるようになるまで、きちんと愛情を持って育てることができるのか…。
自分にそれが可能なのか、全く持って自信がない。
もしかすると私も、母と同じ言葉を我が子に浴びせかけてしまうかもしれない。
そう考えるだけでゾッとした。
「うーん。まぁ絶対に欲しくないかと言えば嘘になるかもしれない。けれど、それは要も同じだよね?前に俺に話してくれた通り」
「うん…」
付き合って半年ほど経った時、私は修ちゃんに実の母と不仲であることを打ち明けた。それと同時に、将来的に自分は子供を育てられないかもしれないということも。
それで修ちゃんが離れていっても、それは仕方がないと思えたし、現に今まで付き合ってきた人の中にもそういう人はいた。
こればかりはどうすることもできない。どうにもできないことは諦めるしかない。
この時の私は、そう思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!