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「要の子供の頃の話も、そしてお母さんの話も知ってる。だから、軽々しく大丈夫だよなんて俺が言うことは間違っていると思う。だけど、要とお母さんは別の人間なんだから。要が必ずしもお母さんみたいになることはないと、俺は思ってるよ」
「そう…かなぁ」
そっと私の両手をとった修ちゃんは、まるで小さな子供を諭すように話を続ける。
「うん。それに結婚をしたら俺達は夫婦になるんだから。何かあっても、それはその時に二人で相談して決めていけばいい。もし子供が欲しいと思う時がきたら、それはその時にまたきちんと話し合おう。それに、子供を作らないでこのまま二人で過ごしたとしても、要と一緒だったらきっと楽しいと思うんだ。だから一緒に歳を重ねていこう」
"一緒に歳を重ねていこう”
この言葉に、思わず涙が溢れだした。
自分一人じゃどうしようもできないことでも、二人一緒にいれば向き合って、話し合って解決していくことができるのだ。
それを面倒がらず、共に乗り越えようとしてくれる人に私は出会えたのだ。
「…っよろしくお願いします」
涙で声を詰まらせつつ、私は深く頷いた。
カーテンの隙間から差し込む月明りが美しい。そんな秋の夜長の出来事だった。
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