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「これ、頂いてもいいですか?」
ロボットの人形を手にリビングへと戻った私の姿を見て、その場にいた彼の家族は皆懐かしそうに目を細めた。
「修太郎が子供の時に一番大切にしていた人形ね」
「要ちゃんに持っていてもらえるなら、きっと修太郎も喜ぶわ」
口々にそう語るお母さんとお姉さんに見送られ、私は玄関口へと足を運ぶ。
きっと修ちゃんが本当に大切にしていた人形なのだろう。もうくたくたになっているその人形を握りしめ靴を履き、お母さんたちへ礼を言おうと振り返ったその時、
「要ちゃん」
ふいに、リビングからお父さんが顔を出した。
「これ、持っていきなさい。好きなものがあればいいんだが…」
控えめに差し出された紙袋を受け取ると、そこにはコンビニやらスーパーで買ったと思われるスイーツ、簡単に食べられそうな食料品が大量に入っていた。とても一人では食べきれなさそうな量だ。
「わぁこんなにたくさん!ありがとうございます」
申し訳なさとありがたさで、この時ばかりは私も精一杯に笑顔を作ってみせた。そんな私にお父さんは「こんなことになって、すまなかったね」と、消え入るような声でそう告げた。
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