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…泣いちゃダメだ。
グッと眼球の奥に力を込め、私は無言で首を振った。少しでも口を開くと涙が溢れ、止まらないような気がして何も言えなかった。
謝らないで欲しい。ううん、謝るのは私の方かもしれない。
数ヶ月とはいえ、彼が倒れるその日まで一緒に暮らしていた私ですら、彼の異変に気が付くことができなかったのだからーーーー
「お父さんたらね、さっき慌てて買ってきたのよ。要ちゃんに何か食べさせてあげなくちゃって」
「でも若い女の子が食べるものなんて分からなかったんでしょー?とりあえず手当たり次第買ってみたって感じだね」
袋の中を覗きそう茶化すお母さんとお姉さんを前に、お父さんはばつが悪そうな表情を見せる。
そんな温かい‟家族”の様子を眺め、思わずクスリと笑みがこぼれるのと同時に、胸の奥から悲嘆とも言える感情が込み上げてきた。
ーーーー私はもう、この人たちの‟家族”にはなれないんだ。
修ちゃんを失った今、せっかく私を迎え入れようとしてくれていたこの人たちとは他人になってしまった。
その現実が痛く、悲しい。
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