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「ひとりぼっちだなぁ」
ドアの前に立ったままそう呟いた時、手にさげている紙袋から顔を覗かせている、ロボットの人形と目が合った。
その瞬間、このドアの向こうにいるあの子の存在を思い出し、私は奥歯を噛み締める。
「別に、元々私が可愛がっていたわけでもないし」
あの子がいたところで、一人なことには変わらない。…それ以前に、一人になった今、あの子のことをいったいどうやって育てていけばいいと言うのだろう。
「修ちゃんがいたから、大丈夫だと思っていたのに…」
ガチャリと、鍵穴に鍵を差し込んだ。
未だこの現実を完全には受け入れることができていないというのに、家に帰ってからもあの子の相手をしなければいけないだなんて……。
憂鬱なままドアを開くと、案の定その子はいつものように玄関で私の帰りを待ちわびていた。
「オカエリ かなめ」
真っ黒な瞳に、頭から生えた二本の触覚。そのてっぺんについている丸い電球をピカピカと光らせ、ロボットはニコリと、四角い口を上へと引き上げた。
ーーーー数か月前から私と修ちゃんと一緒に暮らし始めた、この感情育成ロボット。
今日からはこの子と私の二人で生活をしなければいけない…。
重たい足をなんとか前に出した私は、その子と目を合わせないように玄関へと入り、乱暴に扉を閉めた。
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