2. 混迷

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 事の始まりは数ヶ月前。 休みの日に修ちゃんと二人でデパートへと出掛けた帰り。 「お兄さんお姉さん!福引きやっていかない!?景品が豪華だよー!」 店内全体がセール中ということで賑わいを見せる中、快活な店員の声がけにつられた私たちは、言われるがまま電気屋へと足を踏み入れた。 満面の笑みを見せる店員の前には、福引きの場でよく見る多角形の抽選器が一台。 「店内で買い物をした方はレシートを見せて頂ければどなたでも一回、回せますよ!」 壁に貼られている‟景品”の欄には、液晶テレビに軽さが話題のスティック掃除機、そして松阪牛の文字も。本当に豪華だ。 「修ちゃんやってよ、クジ運良いんだから」 昔からクジ運がない私が回しても、きっと6等のボールペンになってしまうだろう。 「よーし!」と気合いを入れ抽選器を回す修ちゃんの後ろで、美顔ローラーもいいな、でも修ちゃんはゲーム機の方がいいかな、なんてことを考えつつ回転する木箱の行方をじっと見つめる。そして… 「ん??」 ガラガラと回る木箱から出てきた玉を見て、私たちは思わず首を前に出し、目を見張った。 木箱から出てきたのは金でも銀でもない。透き通るように美しい虹色の玉だった。
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