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「っおめでとうございまーす。なんと、特別賞が出ました」
…特別賞!
一等でも二等でもないが、特別賞というくらいなのだからきっととんでもなく豪華な景品が貰えるのだろう。
しかし…
訝しげに店員を見つめる私の横で、修ちゃんも一瞬眉をひそめたのが視界に入った。それもそのはず。
虹色の玉を見た店員は、ハッと目を見開いた後に小声で私たちに‟特別賞”だと告げ、手に持っていたハンドベルを鳴らさずその場に置いた。そしてすぐ側にいた別の店員に、なにやらコソコソと指示を出している。
その行動全体があまりにも不信すぎる。‟特別賞”とはいったい何なのだろう。
「あの、」
「すいませんお客様。今から一緒に事務室に来て頂けますか?商品のご説明と受け取り許可を頂きたいので…」
問いかけようとした修ちゃんの言葉を遮り、店員は私たちの背後へと手を伸ばした。振り向くとそこには[Staff Room]という文字が浮かび上がっているグレーの扉が。…あの向こうに‟特別賞”の景品が待ち構えているのだろうか。
得体の知れない‟何か”を想像し、私はゴクリと生唾を飲み込んだ。そんな私とは反対に「分かりました!」と威勢よく返事をした修ちゃんの瞳は、まるでプレゼントの大箱を受け取った少年のようにキラキラと輝いていた。
物事を前向きに受け取る修ちゃんと、すぐ暗澹たる思いに駆られる自分との差が、いつもこういう場面でハッキリと顔を出す。
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