2. 混迷

4/18
前へ
/154ページ
次へ
それでも、修ちゃんの隣にいる自分のことだけは嫌いじゃないと思えるのだから不思議だ。 「行こうか、要」 「う…ん」 躊躇いつつもしぶしぶ後をついていく私の姿を見て、修ちゃんはふっと一瞬、優しく微笑んだ。きっと私の心の内は読まれているのだろう。 「失礼します」 案内をしてくれた店員に続き、私達も[Staff Room]へと顔を覗かせる。 するとそこには、先ほどの店員と色違いの法被(ハッピ)を着た白髪交じりの男性が一人。そしてその足元には頑丈そうな透明ケースに入ったが一体、じっとこちらを見据えていた。 「お客様、ご足労頂きありがとうございます。実はお客様が当選された‟特別賞”というのがこちらでして…あ、よろしければお座り下さい」 白髪交じりの男性は、ケースへと向けた手を、今度は私たちの目の前にある椅子へと方向転換させた。胸には‟店長”という札が下げられている。 「へー!ロボット…ですよね?」 視線をケースへと向けたまま、修ちゃんは椅子を引き腰を下ろした。私は店長という男性を一瞥した後、目の前の長テーブルに置かれている【契約書】という紙に手を添える。 そこにはあのロボットを取り扱う上での重要事項とも言える文章が、日本語と英語の両方で記載されている。しかし、驚くのはその量だ。 一般的にこういったものは一枚、いや、そうじゃなかったにしても数枚程度に及ぶものではないのだろうか。 しかし、私たちの目の前にある【契約書】は国語辞典並みの分厚さがあった。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加