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多少の申し訳なさもあり、私は店長を一瞥した後に横に座る彼の袖を引っ張った。
机を挟んで向かいに身を置く店長は「やっぱり」という感じでがっくりと肩を落としている。
その様子から察するに、受け取り拒否をしたのは私達が初めてではないのだろう。
「うーん、でもせっかく当たったしなぁ」
じっくりと説明書に目を落とし続けている修ちゃんは、すでにこのロボットのことを気に入ったのだろう。その表情は真剣だ。
「犯罪等の事件に巻き込まれないためのプログラムはしっかりと搭載されているらしいです。人と生活をすることで、一般の人と変わらない生活を自ら身に着けていくこともできるらしく、もちろん食事代なんていうのもかかりません。月に一度だけ充電をして頂ければ済むようですが、その一度の電気代もスマートフォン一台分の電気量となんら変わりはないようです」
悩む修ちゃんの様子を見て突如饒舌となった店長は、あからさまに彼の方だけに体勢を向け、身振り手振りで説明をし始めた。その勢いは凄まじく、止む様子がない。
「カメラや録画機能も搭載され、スマートフォンとの接続も可能ですので主が留守の時は家の中を守ってくれますし、その様子もお手元のスマートフォンで簡単に確認することができます。すでに実験が進んでいる海外では、このロボットが家事や育児を手伝ってくれたり、お子さんに恵まれない夫婦は実際に我が子のように可愛がっていたりと、結構人気も出てきているようですし、今後、メジャーになっていくことと考えられます。
いかがでしょうか?割と世界最先端なロボットだと思うのですが…」
乗り出していた身を元の位置におさめた店長は、肩をすくめ交互に私たちへ視線を向ける。
‟世界最先端”なんて言葉を使われたら、確かにここで手放すのも惜しい気がしてしまう。
今やAIが搭載されているシステムなんて、公共の施設や病院なんかでも目にする機会は多い。それを考えると、そこまで身構えなくてもいいのかもしれない。
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