86人が本棚に入れています
本棚に追加
最初こそ戸惑ってはいたが、彼と過ごすひと時はとても楽しく、尚且つ穏やかな時間だった。
趣味や育った環境は違うものの、その場の状況や会話を進んで一緒に楽しんでくれるような、そんな彼の柔らかさに私は徐々に惹かれていった。
熱く、燃え上がるような思いとはまた違う、じんわりと胸を打つ、そんな優しい温もりを彼は私にくれたのだ。
「要ちゃんとは波長が合うよ」
何もない私のどこに、彼が興味を抱いてくれたのかは分からない。
けれど5回目のデートの後にそう告げられ、私達は晴れて交際を始めることとなった。
‟5回目”というところがいかにも彼らしい。少し月日が経って「普通は3回目じゃない?」と笑いながら尋ねたところ「いや、3回目も4回目も緊張して…」と苦笑いを浮かべていた彼の姿を、今でも鮮明に覚えている。
強引ながらもきっかけを作ってくれた池田さんには付き合ってすぐ、当然ながら一番に報告をした。
「やっぱり!!!大澤さんとあの彼、一目見た時から合うと思っていたのよー!私の目は正しかったわぁ」と、池田さんはあの時と同じように両手を叩き、自分のことのように喜んでくれた。
最初のコメントを投稿しよう!