第1章 『たい焼きの数えかた』

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こ、子供⁉︎ 楽さんも、あんぐりと口を開けている。 「兄ちゃん、20歳でガキできたのか?」 「はい。正確にいうと、19歳で。もうすぐ1歳になります」 「マジかよ?」 楽さんの口調が、僅かばかり若返った瞬間だ。 だからどこか落ち着いた感じがしたわけか。2人が並んでいると、不思議な感じがした。子供は同級生なのに、かたやようやく成人したばかりで、もう片方は還暦を迎えた。 こう見ると、楽さんのほうが浮いているように感じる。 だって、楽さん後輩だし。 「兄ちゃん、実は俺もガキが生まれたばかりでよ」 「えっ⁉︎」 今度は、彼があんぐりする番だ。 「まだ赤ん坊でよ、初めて抱いた時どんな気した?」 「初めて、抱いた時?」 「そう。良かったら聞かしてくんねーか?」 前のめりに食いつく楽さんは、誰にも聞けなかったことを聞いているんだ。源さんや亀さんに聞けば秒で済むことなのに、意地が邪魔をしていたに違いない。 たまたまたい焼き屋で会った、見も知らない若い青年になら大丈夫と踏んだのだろう。 「教えてくれ、たい焼き10尾でどうだ?」 「ちょうど10尾焼けそうです」 僕が口添えすると「てめぇは黙ってろ!」と一喝された。
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