第1章 『たい焼きの数えかた』

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「初めて抱いた日は__」 青年はどこか遠くを見ていたけど、少しずつ焦点が戻ってきて__やがて楽さんを捉えた。 「ちょっと、気味が悪かったかな」 「マジか!」 また若返った楽さんは、彼を食いつくさんばかりに詰め寄る。 「確かに嬉しかったけど、それよりも軽すぎるっていうか、抱いた瞬間に鳥肌が立ったし、皺が凄くて可愛いとは思えなくて、でも僕の息子なんで可愛いはずだし、周りは目を輝かせて微笑んでるし」 「分かる。もっと喜べって言われてるみたいでよ」 「そうなんですよ。でもそれとは逆に、体がどんどん冷めていくというか」 「帰りたくて仕方なかった」 「はい、よく分かります」 青年がにっこり微笑んだ。 楽さんは、椅子に深く座り直し、放心したようにぼんやりしている。 聞きたかった答えだからか? やがて僕に向かって「ほらな」と一言だけ言った。 やや得意げに。 「それで、今はどうなんですか?」 僕がそう尋ねた矢先、楽さんが再び身を乗り出す。 「今は__」 たい焼きを急いでお茶で流し込むと、青年は先に微笑んだ。 「可愛いです」と。 「どんどん僕に似てくるんです。それを言うと親バカだって笑われるんですけど、僕には分かる。血じゃなくて、同じ時間まで分け合った感覚っていうか繋がりっていうか、それはきっと、親子でしか感じることができない絆だと思います」
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