第1章 『たい焼きの数えかた』

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「親子でしか、感じることができない絆__か」 うわ言のように繰り返す楽さんの体に、その言葉が染み渡っていくのが見えるようだった。 「だから、大丈夫だと思います」 さっき僕が言ったセリフとほぼ同じことを、青年が言う。それなのに楽さんは、恫喝するどころか目を潤ませていた。 「兄ちゃん、ありがとな」 肩を叩き、立ち上がる。その顔は、憑き物が取れたみたいに清々しくて__。 「ちょっくら、坊主の顔でも見てくるかな。兄ちゃんのは俺から奢り。あと何枚か焼いてやってくれ」 「いや、そんな__」 「遠慮すんなって。なんだって先輩だからな!」 がはは!と豪快に笑い上げ、お店を出て行った。 あの笑い声、久しぶりに聞いたな。 青年はずっと、楽さんの後ろ姿を見送っている。見えなくなるまでずっと__。 「もう何枚か食べますか?」 「えっ?」 彼が向き直る。 僕が居るのに、初めて気づいたといった風に。食い入るように見つめてくる彼を、僕は見つめ返す。 「良かったんですか?」 「えっ__?」 「もっと他に、言いたいことがあったんじゃないですか?」 そう尋ねた。
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