第1章 『たい焼きの数えかた』

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「あっ、大丈夫。たい焼き屋さんには色々と相談に乗ってもらったりしてたから。それ以外はもれなく叩き割ったけど」 がはは、と幼い顔に似つかわしくない豪快な笑い声。 やっぱり親子なんだ。 「それから色んなことがあって、僕も子供ができて、それで一言お礼が言いたくてお願いしたんだけど__過去だったかぁ」 「すみません」 「たい焼き屋さんのせいじゃないよ。どっちに行くかは運次第だって、たい焼き屋さんに__あっ、未来のね。そういえば、未来のたい焼き屋さ__」 「ああ、僕は大丈夫なんで!」 とっさに遮った。 空気の分際で、お客さんの話を強引に止めてしまった。 「そっか。知っちゃうと楽しみが無くなるか」 『楽しみ⁉︎』と思わないでもなかったが、ここは懸命に堪えて神妙に頷いておく。 「お茶、いれ直しましょうか?」 と。 すると青年は思い出したように、ポケットからなにかを取り出した。 苴だ。 木の薄板に包(くる)まれた、食べかけのたい焼き。 「これ食べないと、戻れないんですよね?」 「__はい」 そっと、熱いお茶を差し出す。 尻尾しかないたい焼きを、青年はしばらく名残惜しそうに見つめていた__。
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