第1章 『たい焼きの数えかた』

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「たい焼き食いまちゅかー?」 源さんが焼きたてのたい焼きを突き出すも「やけどするだろ!おじちゃんが、高い高いしてやろうか?」と亀さんが立ち上がり、吾郎さんはポケットから煎餅を取り出して食べさせようとする。 「いないいない、ばぁー‼︎」 楽さんが目をひん剥いた顔を、倅に近づけた。 あの鬼瓦みたいな顔、僕なら卒倒するな。 だから火がついたように泣き出すかと思えば、倅くんはきゃっきゃと笑い出す。 「いないいない、ばばぁー‼︎」 四方を取り囲まれ、次から次へと頼んでもいないのに間抜けな顔をさらけだす、還暦を過ぎた一国一城の主たち。 赤ん坊の無垢は、どんな肩書きも取っ払ってしまうんだ。 「可愛いなぁ、おい」 源さん始め、みんな溶けてなくなりそうなくらいベッタリだ。 「おめぇーんとこ、孫4人もいんじゃねーか?」 楽さんが、口に含んでふやふやになった小豆を食べさせながら言った。 いや、だからまだ無理じゃないの? 「んなもん、孫もいいとこ3歳までだな」 「じじぃを金づるにしか思っちゃいないよ」 亀さんは数が多いだけに、言葉に重みがあった。 「よし、おじさんがなんでも買ってやろう!」 吾郎さんが抱っこしたいとせがみ、倅くんを腕の中であやしている。 みんな、とても眩しく微笑んでいるけど__。 その子に将来、お店のガラス全部、叩き割られるんだよ。
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