第2章 『頭から?尾っぽから?』

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2 「おい、朝のなんだあれ⁉︎」 入ってくるなり、源さんが僕を睨みつける。 時間は8時半。 やっと行列が終わったところで、僕も正直へとへとだった。みんな数は『2枚』だったけど、向こう側が見えないくらい女子学生たちで溢れかえっていたんだ。 あんこ、足りるかなぁ? 「俺はてっきり、変わり種に手を出しちまったかと思ったぜ」 楽さんが、しかめっ面で言った。 「カスタードとかな」と、亀さんが吐き捨てる。 「若者に媚びを売り出したか」 そう言う吾郎さんは、いつも変わった煎餅を売っている。 この間なんか『アボカド入り煎餅』を売ってたじゃないか。アボカドの苦味と醤油の辛さが混ざり合って、お蔵入りになった駄作だ。 「それが、テレビでやってたらしいんですよ」 このままじゃ、なぜか僕が悪者にされてしまうので、早めに真相を話すことにした。 『恋が叶うおまじない』として、たい焼きが出てきたらしい。 「頭が尾っぽ、同じところから食べたらその相手と恋が叶う」 だから、女子学生たちが押し寄せたんだ。 そう思うと、美代ちゃんがどこか落ち着きなかったのも頷ける。 きっと、恋をしていたんだろう。
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