第2章 『頭から?尾っぽから?』

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「はい、お待たせしました」 たい焼き2枚とお茶を出すと「これこれ」と少女のように微笑んで大口を開けた。 「あっ、一緒に食べる?あなたは多分、頭からかしら?」 なんて含み笑いをする、悪戯っ子な面がある。 「大丈夫です、味見してるんで」 丁重にお断りすると、パクパクと食べ始めた。 頭からだ。 うん、やっぱり占いは当たっている。 「腰、大丈夫?」 「はい、この間、お世話になったので」 「またいつでもいらっしゃいよ」 黄金の手のひらと呼ばれている牧子さん。その手が触れるだけで、体の悪いところを言い当てるから驚きだ。 そして施術が終わると『すぐに小豆を食べると筋力が回復する』と、うそかまことか分からないことをお客さんに吹き込み、ありきに送り込んでくれる。 有り難いご近所さんだ。 「由梨さんは出張ですか?」 「あら、由梨のことが気になるの?」 牧子さんがまた悪戯っ子の目をする。 こういう展開になるのは分かっていたが、つい聞いてしまったんだ。 牧子さんの1人娘の、由梨さんのことを。 由梨さんは母親と同じ整体師で、主に病院などに出張に出ている。あんこが大好きで、たい焼きでは心もとないと、あんこそのものを買っていく時もあった。
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