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ゴールデン街
あれから何度もこの通りに来ているけれど、彼女に会う事は無かった。
夜の花園神社そば。新宿ゴールデン街と呼ばれる辺り。この辺りで夜の闇が独特の香りと深さを持っていて、それは煙草と酒と香水の混ざったいわく言い難い香りだった。
その頃ぼくは、勤めていた会社が整理される事になり、少ないツテを頼って就職活動をしていた。大して仕事ができる方ではない頭数だけのような存在だったから、面接の結果も概ね期待できなかった。
その日、沈んだ気持ちを抱えたままでは面白くないし遊んでいられるのも今のうちだと想い、一度行ってみたかった新宿ゴールデン街に呑みに出かけた。
おっかなびっくりで人が数人しか座れないようなお店に飛びこんでみたけれど、皆とても良い人で拍子抜けするようだったのを憶えている。店名は「サテン・ジャケット」と言った。
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