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頼りないスツールに腰を下ろしてから、こういう店では何を頼むのがセオリーなんだろう、とつまらない事を考えながら、とりあえずジャック・ダニエルズのオン・ザ・ロックを注文した。マスターはぱりっとしたシャツを着ていて、怖い印象の人では無かった。柔和な笑みで「分かりました」と言い、製氷機から氷を出して、アイスピックで割り始めた。
そんな風にして思ったよりも静かに、ゴールデン街の夜は始まった。
「ちょっとあんた、淋しそうじゃない?」
ぼくに声をかけてきたのは、皆が「マドセン」と呼んでいるぼくより結構年嵩の、所謂「オネエ」だった。
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