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「…黎、俺は大丈夫だから…」
それでも尚連中が走り去った方を睨んでいると、背中に張り付く温もりと優しい香り。
腹へと回された腕をそっと撫でる。
「怪我してないか?皓太」
「全然。黎が直ぐに来てくれたから」
皓太の腕をそっと外し体の向きを返す。
思った以上に近い位置で俺を見つめる皓太の眼差しに、心が震えた。
「5年前にこのガードレールの前で逢ったんだよな、俺たち…」
皓太の指先が俺の頬に触れる。
「…だから待ち合わせ場所にしたんだって言ってたろ?」
皓太の指先を手に取り唇を寄せる。
「皓太…欲しい。皓太の血が…皓太が…」
抱き寄せ首筋に唇を寄せる。
「…っ、黎……早っ…く、帰ろう…」
「…皓太、今日はココから血を飲みたい…」
そう言って太腿の内側を撫でると、小さく震えながらも頷いてくれた皓太の体を更に強く抱き締めた。
あの時と変わらず今でも時折見せる少年の様な表情と、すっかり大人になった逞しい体
それらすべてが俺を捕らえて離さない。
身を切る思いで体を離し、皓太の手を握り足早に歩き出す。
黙って俺に腕を引かれるまま歩く皓太が、強く握り返してくれる掌の熱さに頬が緩む。
皓太が俺の傍に居てくれるなら、それで良い
皓太無しではいられない。
それが俺の総て…
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