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with you ③
レイを家に連れ帰った日
「お前に最初に言っておく事がある」
「何?」
「俺は人間じゃない」
「え?」
「人間社会で生きていく以上こういう姿をしているけど、俺は人間じゃない」
「じゃあ…何?」
「俺は…吸血鬼だ」
「吸血鬼って、あの…ヴァンパイアとかドラキュラとかの…?」
「フィクションによくある設定は大概当てはまらないけど…まあ、そんなモンだ」
「ふ~ん…そうなんだ」
「皓太は……俺が怖くないのか?」
何故だろう…どうしてだか妙に納得がいって
「うん、怖くないよ。だってレイは良い吸血鬼なんでしょ」
あれから約一年が過ぎた。
あの日、即答した自分は今でも間違ってなかったと思う。
黎は未だに一度も俺の血を飲んだ事が無い。
それに、先月婆ちゃんが亡くなった日もずっと泣いていた俺に
「そのまま泣いて暮らすのも結構だけど、死んだ婆さんが悲しむぞ」
そう言いながらも一晩中傍に居てくれた。
いつかこんな日が来ると分かっていたのに、この世界で一人ぼっちになる覚悟は当にしていたのに
置いていかれる事がこんなにも恐ろしくて、それを忘れさせてくれる黎という存在がこんなにも俺の中で大きくなっている事に改めて気づいた。
「じゃあ、俺学校行くけどあんまり無理するなよ、黎」
「分かってる……毎日毎日同じ事言うな」
「だって一昨日帰ってきたら部屋の中で倒れてたじゃんか!」
「あれは昼間雨が降りそうだったから、洗濯物を取り込んでたら陽射しに当たっちまっただけだって言ったろ!」
「俺は!洗濯物が濡れる事よりも!黎に何かある事の方が嫌なんだよっ!!」
「…っ、分かったからさっさと行け!遅刻するぞっ!」
面倒臭そうに手をひらひらと振り顔を背ける黎。
こうなると何を言っても聞く耳を持たない。
「行ってきます…」
仕方なく、呟く様にそう言って玄関を出た。
いつか言いたい。
いつの日か言えるだろうか…
“黎、俺の血を飲んで” と
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