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with you ④
「黎、最近夜遅くに帰ってるみたいだけど…何してんだ?」
「吸血鬼ってのは夜型の生き物だ。帰りが真夜中でもおかしくないだろが」
「でも!今まではどんなに遅くても12時過ぎには帰ってただろ?それが最近じゃ深夜2時とか3時とかばっかりじゃんか!?」
「何でお前はそんな時間まで起きてんだよ!子供はさっさと寝ろ!」
「俺はもう17だっ!子供じゃない!」
食って掛かる様に言った俺に黎が苛ついたのが分かったけど、睨む様に見つめた視線を逸らす事はできなかった。
今月、俺は17歳の誕生日を迎える。
いい加減、子供扱いされるのはうんざりだ。
けれどそれ以上に、黎の帰宅が深夜の日は決まってその衣服から女物の香水が匂うのが、堪らなく嫌だった。
「あのなぁ!……って、おい…皓太?」
一緒に暮らし始めた時、近所には従兄だと紹介し本人も一応保護者としての自覚を持っていたのか、事ある毎に説教してきた黎はいつも正しかったと思う。
それでも…嫌だ…
「何で…泣いてんだよ…」
そう言われて初めて、自分の頬を流れる滴に気づいた。
「…なっ、泣いてなんかっ…!」
慌てて涙を拭った手を不意に掴まれて、反射的にその体に縋るように抱きついた。
「黎、誰と会ってるんだ?!何処かに行っちゃうのか!?」
「…バ~カ、別に何処にも行きやしねぇよ。会ってたのは同じ吸血鬼だ。互いに少し血を飲ませて貰ってたんだ……やっぱさ、水とか果物の汁じゃちょっとな…」
「……その吸血鬼って女の人なの?」
「…あぁ、まぁな…先月知り合ったんだ。夜の仕事の方が獲物を探し易いとかで、その後会うから遅くなってた。でもよく分かったな」
「…いつも……香水が…」
「あぁ…血の臭いを誤魔化す為にな…」
黎が宥める様に俺の頭を撫でる。
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