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without you ①
そいつに初めて逢った時は、まだほんの子供だと思っていたのに。
「皓太。この前の模試の結果、見せろ」
「え?」
「『え?』じゃない。早く出せ」
まだ何か言おうとする皓太に、問答無用だと掌を差し出す。
「……何だこの点数は?」
渋々見せたそれに目を通した後ダイニングテーブルに置き、人差し指でトントンと叩く。
「何で英語がこんな点数なんだ?前より下がってるじゃないか」
「で、でも…全国平均よりは上だぞ…?」
「バカかっ、お前は!こんなんじゃ良い大学になんか行けないぞ!」
「俺は大学には行かないって!何度も言ってるだろ!?」
「アホぅ!まだそんな事言ってんのか!」
「俺は高校を卒業したら就職する!夜間警備とか夜の仕事をすれば、昼間はずっと黎と一緒に居られるだろ!」
「…っ、お前は……まだそんな事をっ!」
テーブルの上の紙をひったくる様に掴んで、そのまま自室に閉じ篭った皓太に小さく溜め息を吐いた。
昨年の秋、
「黎、俺の血を飲んで…」
そう言って俺を真っ直ぐに見る皓太を無性に愛しいと思った。
いや、親代わりとしての愛情ならとっくに持っていた。
あの瞬間に感じたのは、一人の人間としての皓太に対する愛しさだ…
濡れて艶めく目を見た瞬間、何も考えられなくて遮二無二皓太の体を抱き締めながら押し倒した。
その首筋に唇を寄せ躊躇う事無く牙を立てた。
「んっ……ぁ、あっ…レ…イ…」
牙を立てた痛みの所為なのか震える体を更に強く抱き締めて、皓太の血で喉を潤した。
あの日以来、時々皓太に血を飲まさせて貰う様になった。
無論、飲むのは皓太の血だけだ…皓太の心を踏み躙る事だけはしたくないから
けれど、 “人間の血” という格別のご馳走を口にした事で体力が戻り、夜の間だけとはいえ自由に出歩く事が可能になった事で、一気に皓太の心配性が発動した。
その結果がこれだもんな…
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