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皓太の部屋のドアをノックする。
「皓太、入るぞ?」
返事が無いのも構わずドアを開け部屋へ入る。
ベッドの上で抱えた膝に頭を乗せて座る姿はまだまだ子供だ。
その腕も肩も、その胸も…出逢った頃よりずっと逞しくなったのに…
「皓太…」
そっと皓太の隣に腰を下ろす。
その肩を抱き寄せる。
「…俺は…居たいんだ…」
「え?」
「俺は…黎の傍に居たいんだ。ずっと…一緒に…黎と」
呟く様な囁く様なその言葉に、皓太の黒髪に唇を寄せる。
「俺も居たいよ。皓太と一緒に」
伏せていた顔が上がり、濡れた目が俺を見る。
「…本当に?」
「ああ。その為にも皓太には大学に行って欲しいんだ。人間社会じゃどんな綺麗事を言っても学歴優先なのは今も昔も変わらないからな」
「…俺の為?それとも黎の為?」
「2人の為だよ。俺たちに誰も文句を言わせない為にだ」
「……分かった。俺、頑張るよ…」
「ありがとう、皓太」
両腕で皓太を抱き締める。
と、不意にシャツの背中を強く握られる。
「頑張るから…黎、1つだけ願い事聞いて」
「何だ?」
「今年の俺の誕生日に……黎が欲しい…」
驚いて皓太の体を離す。
見返した目は、あの日と同じ様に濡れて艶めいていた。
「……黎に抱いて欲しいんだ…」
「…なっ、にを……皓太…」
「去年のあの日からずっと、黎は偶に俺の血を飲むだけで他に何もしてこない……キスしたいとか…抱き締めて欲しいとか…そんな風に思うのは俺だけなのか?」
シャツの袖を握る皓太の指先の微かな震えに、あの日俺の腕の中で震えていた皓太の姿を思い出す。
「…あの時……お前は震えていた…痛いとか怖い思いをもう…させたくないんだ」
「違う!あの時は…そりゃチクッとはしたけど、でもそれ以上に嬉しくて…何より気持ち良くて…それで……」
耳まで紅く染めて俯いた人の顎に指を掛け、上を向かせる。
「…分かった。今度のお前の誕生日に俺の全部をやるよ。当日キャンセルは効かないぞ?」
「…しないよ、そんな事……絶対に無い…」
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