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without you ②
「皓太、早く出ないと遅れるぞ!」
「分かってる!あ、黎。今日俺、三限だからバイト一緒に行くからな!」
「ああ。ちゃんと待ってるよ」
「約束だぞ!行ってきま~す!」
朝、大学へと通う皓太を玄関で見送るようになって、半年が過ぎた。
皓太が俺との約束を守って大学へ進学したのと同時に、俺も夜は仕事を始めた。
とは言っても、ホテル内のバーでバーテンダーとしての仕事だ。
できるだけ高給である事と、皓太を納得させるにはこの辺が妥当だと言えた。
「ホテルのバーって…変な事してないだろな?」
「海外のお偉いさんとかも泊まる高級ホテルだしその辺は固そうだぞ。英語が喋れるってのが随分と喜ばれたよ」
「ふ~ん……浮気、するなよ…」
それでも唇を尖らして不満をちらつかせる人の腕を引き寄せ、耳許で囁く。
「皓太こそ、コンビニでバイト初めて可愛い女の子にばっか笑顔振り撒いてんなよ?」
目許を赤く染めて睨む様に見る人に微笑んで、その首筋に顔を埋めながらゆっくりと押し倒した。
皓太の18歳の誕生日に、皓太に望まれるまま抱いた。
泣きながら、震えながら、俺にしがみつく様に体を寄せる皓太を、これほどまで愛しいと思った事は無かった。
出逢った頃はまだ幼さの残る子供だったのに、今じゃ下手すりゃ俺よりも逞しい体つきになった。
「黎は変わらず綺麗だな……いや、今の方がもっとずっと綺麗だ…」
昨夜も俺の腕の中でそう言って、伸ばした指先で俺の前髪に触れる皓太に胸の奥がぎゅっとなった。
俺はきっと、もう皓太無しではいられないんだろう…
人間と吸血鬼では一生の長さが全く異なる。
俺より幼かった皓太が、いつか俺より歳を取り、俺より先に人生を終える時が来る。
その時、俺はどうなるんだろうか?
皓太の居ない時間を、日々を、俺は生きていけるのだろうか?
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