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クリスマスイブ
クリスマスイブ、ライトアップされた遊歩道を桐原優菜は、大学3年からまる5年の付き合いになる彼氏、松本雅樹との待ち合わせ場所のカフェに向かい、ヒールを鳴らしながら走っていた。
《今日こそは定時上がりにしたかったのに、帰り間近に上司から頼まれた仕事で、待ち合わせの6時半にはだいぶ遅れちゃったけど、ディナーの予約時間は大丈夫なのかな。》
優菜は、事務機器を扱う会社の事務で就職して4年目に入り、人事課で後輩の指導をしつつ、就活に関する業務を担当しており、内定が決まった学生とのやり取りや次年度やさらに次の就活のためのセミナーや就職サイトとのやり取りで忙しい毎日を過ごしている。
一つ上の雅樹とは、大学のフットサルサークルで知り合い、雅樹の大学卒業前のクリスマスイブに付き合い始めた。
比較的、残業の少ない地方公務員の雅樹と違い、就活セミナーが週末や地方でもある優菜は、休日出勤も当たり前で、まる5年のお祝いも兼ねたクリスマスイブの今日は久しぶりのデートだと楽しみにしていた。
《こんな事なら、ディナーのレストランに直接集合に変更してもらっておけば、楽だったかな。》
今日はどこで食事かも聞いておらず、1週間前に送られてきたメッセージにも
12月24日午後6時半、大学の近くのカフェ『くるり』で待っている。
としか書かれていなかった。
付き合いだしてから、1周年、2周年とクリスマスイブに少し贅沢なディナーを食べて、雅樹の部屋で朝まで過ごすのが当たり前だったし、待ち合わせはレストランの事も優菜の会社まで迎えに来てくれた事もあったから、わざわざ大学の近くのよく行っていたカフェで待ち合わせなんて優菜は珍しいとも思ったが、そろそろプロポーズを考えてくれていて思い出のカフェなのかなと考えるとサプライズにするつもりの雅樹に突っ込んで聞かない方がいいだろうと何も聞かずにOKのスタンプだけを返したのだった。
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