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君を強く想えば想うほど、
君を見ることが多くなる。
僕の心の見えない力が
君を引き寄せるのか?
今日も同じ電車だね。
約束したわけじゃないのに、いつも同じ車両になる。
たくさんの人間の顔の中で、君の白い横顔だけが、淡い光に包まれている。
人の壁で、これ以上近づけないけれど、
その美しい君の横顔を見つめるだけで、時間は優しく止まるんだ。
こんなにも誰かを好きになることが初めてで、
甘い痛みにくらくらする。
世界が まるで、
君を軸にして動いているよう。
昼休みのチャイムの音。
昔はあんまり好きじゃなかったけど、
いつからか、遠い海辺で鳴るサイレンみたいに聞こえるようになった。
君は、校庭の銀杏の木の下で、静かに読書をするのが好きなんだよね。
初夏の熱を孕んだ風も、木陰では緩やかな空気のヴェールになる。
君の長い黒髪に、生い茂る葉をすり抜けて漏れる光が、ところどころに射している。
まるで一枚の静かな絵のようで、
こんな光景も、僕は好きなんだ。
大切な夏の想い出の一つだよ。
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