第二章

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第二章 師匠7 霜斬 蛹   1人の女性がしきりにドアを叩く音がした。 長い廊下にその音は反響して響く。 此処は城下を見下ろす様に建っているペルシアナ城、2階。 その中の1室に椎菜が使っている部屋がある。 その部屋のドアを、黒髪の女性が叩いていた。 始めは優しく叩いていたのに、今はかなり音が大きかった。 女性の名は、霜斬 蛹。椎菜の姉である。 「もう、何で出てこないの…………」 呆れた様に呟くと、ドアを蛹は見つめた。 彼女の妹が、”この部屋に引きこもって出てこない”と言う事態が起きてからもう1日になる。 騎士が気配探知で、椎菜の生存確認、存在確認をしたので椎菜がこの部屋にいる事は間違い無いのだが、一向に出てくる気配はない。 たまに喉乾いた…..とかの呟きが聴こえてくるだけである。 「椎菜………もう一日経ったよ。お腹空いたでしょう。出てきてよ。」 悲しげにそう言うと、蛹は最後にもう一度ドアを叩いた。 出て来る気配はしない。 はぁ、と何度目になるかわからない溜息をつくと、踵を返した。 「椎菜……あと2日出て来なかったら、ドアを蹴って開けるからね。ついでに、締め上げるから。」 ポツリと、物騒な事を言い残して蛹は帰って行った。 規格外なのはこの姉妹似ているのである。 2階は、蛹が帰っていった後、静寂を取り戻した。
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