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第二章 師匠8
「やっと着いた〜」
私は冬の王宮ーバビロンに来ていた。
青と茶色のカラーが印象的な、ヨーロッパ風の涼しげな城が見える。
王宮の周りは、バビロンの都市が広がり周りはずっと草原しか無い。この草原をずっと歩いて行くと、草原の国ビロニアがあるそうだ。
いつか行ってみたいと思った今日この頃である。
魔女様の所までは流石に無理だったので、魔女様の家に近いバビロンの都市に降ろしてもらった。
丁度此処は商人の拠点になっているそうなのでおじさんにとっても都合が良かったそうだ。
竜車から手を離し、運動神経ゼロな為、懐かしき大地にダイブする。
漫画みたいに軽々しくスタッと降りれないのだ私は。
ズシャーーと音がして土まみれになりつも着地した。
「嬢ちゃんずっと寝てたのに良く落ちなかったな…………………。」
おじさんが呆れた様に竜車から此方を見た。
まぁね。
スキルの力は絶対ですよ!
そう。私は新しくゲットしたスキル豪腕を発動し続けていたので、寝ても落ちなかったのだ。あのスキルのお陰で快適な空の旅を楽しめた。………但しその前は地獄だったが。
夜ご飯と朝ご飯抜きで、飛行し続けたので今は昼。
お腹が空いてたまらない。
スキルを発動していると、どうやら通常よりお腹が空く様だ、尋常じゃない疲れがスキルを切った瞬間襲ってくる。
早くご飯を食べねば!!!
倒れる!!!!
土埃を払いつつも立ち上がり、おじさんに頭を下げる。
「ありがとうございました、此処まで。それでは…….」
おじさんに礼を言いそのまま、すったこらさっさとご飯を食べに行こうとした瞬間、今竜車から滑るように降りてきたおじさんに肩を掴まれた。
「な、何ですか?」
驚いて振り返ると、満面の笑みを浮かべたおじさんがいた。
なんとなく、足が逃げの準備をしていた。
「嬢ちゃん。にしても、竜車で寝る奴初めて見たよ。此処でその縁を終わらしちまうのは、勿体ない。………てワケで、飯でも食いにいかねぇか?その後でも遅くねぇだろ魔女様の元にいくのは。」
バビロンの都市の北門を出てすぐに、霧の湖に向かって行けば、すぐ着くしな、魔女様の家は…と言うおじさん。
おお、おじさん。その申し出、有り難く受け取るよ………竜車には緊急時以外乗らないかも知れないけれど。
一応、商人とも繋がりを持っていた方が後々良い結果に繋がる気がする。
おじさんは怪しいが、ピンチになったら水をかけて、ついでにスキルを使って殴る。
逃走法を思い着いたので大人しくおじさんに着いて行こうと思った。
「はい、そうですね。なんだか貴方とは長い付き合いになりそうな気もするので。」
答えると、おじさんはニカッと笑った。
「そうか、嬢ちゃん。じゃあ行くか。」
コツコツコツコツ……
石畳に2人分の足音が響く。
街を見ていると、ある事に気がついた。
なんと言えば良いのか……とりあえず人がいなかった。
店は大体閉まっている。
家を見ても扉から窓が閉まり、中が見えない。
但し、路地裏や橋の下等を興味本位で覗くと、痩せ細った子供達や大人達がーーつまりスラムがあった。
「これから行く店はな…マスターの作るハモルが美味しくてな……」
おじさんが何か喋っているが、半分聞いて半分聞き流しつつスラムをじっと観察していた。
おじさんの様子を見ていると、こう言ったスラムは良くあるのだろう、特に気にしている風には見えない。
にしても町が静かすぎる。
ちょっと聞いてみますか。
「あの、すみません。町が静かすぎると思ったんですが、何かあったんですか?」
「あぁ、それは、魔王軍の影響だよ。やっぱり王都は珍しく賑わってたけどね。嬢ちゃんの住んでた所は違うのかい?」
嘘を言っておく。
「はい。魔物の影響は余りありませんでした。にしても、魔物の影響だけで何故家に引きこもるんですか?」
ははっ引きこもっているワケではないけどね…とおじさんは話ている。
曰く、町の中にも魔物が出るようになったからこんな具合に静まり帰っているそうだ。
成る程な〜と、思いつつも少し警戒する。
もう少し歩いていると、おじさんがピタリと立ち止まった。
おじさんが見ている方向を見ると、木のログハウスのような店がある。
緑色と白色の葉っぱがお店の周りを囲み、黒い看板が立てかけてあった。
店にはオープンの札がかかり、美味しそうな匂いが始終漂ってくる。
「着いたぞ。此処がオススメの店だ。」
やっとご飯か。
お腹すいた!
木のドアを開けて店に入る。
中はカウンターに木のテーブルが四つ程ある。
中央には竈門があり、今は夏だからか火は燃えていなかった。
カウンターの近くは、木に粗雑に書かれたメニューらしき物があった。
何人かの人がご飯を食べていて、此れは混んでいる?のかも知れない。
初老のおじさんが、グラスをカウンター近くの多分料理場で、吹いている。
おじさんがカウンター席に座ったので、私もそれに習い隣に座った。
「マスターいつもの。嬢ちゃんは何か食べるかい?」
いつものってカッコいいな、おじさん。
メニュー見ても何がなんだか分からなかったのでここは、最強の…..
「マスターのオススメってありますか?」
マスター?は、ニコっと微笑むとこう言った。
「ありますよ。じゃあお嬢さんはそれで。カリビアはいつものですね。」
はいはいわかってますよ、とでも言うようにマスターは答えた。
「にしても、カリビアが女性と一緒にこの店に来るとは。珍しいですね。でも恋人… にしては幼すぎる。まさかカリビア、貴方ロリコ……」
ん? ロリコン?ロリコンだと?
そんなマスターの言葉を掻き消すようにおじさんは大声を出した。
「あー違う違う。嬢ちゃんは、商談相手だ。そんなんじゃあ無いから安心してくれ。
な、なあ嬢ちゃんもそんな目で見るのやめてくれ無いか?」
ロリコンではなかった。
良かった良かった。
そうだったら警備隊に突き出す所だった。
ネットで調べて分かった事だが中学生はギリギリ、ロリらしい。
そうには思えんけどな。
実際の中学生は可愛く無い。
「よかったです。ロリコンだったら警備隊に突き出している所でした。」
どうやら私と同じ事を考えていたマスターが安心した様に言う。
ご飯が出来るのは、まだ先のようだ。
おじさんと、何か話して待っているか。
ふんわりと美味しい匂いが調理室から溢れ出てくる。
その匂いを嗅いでいると、思った事がある。
ヤバい、これ我慢できるかな。
本気で空腹で、ご飯が出来る前に倒れそうだ。
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