第二章

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第二章 師匠10 注:少しグロテスクなシーンがあります。苦手な方は飛ばして下さい。 茜色の光が刺す町を、私は1人歩いていた。 誰もいない町は静まり返っていて、人が住んでいる様には思えない。 廃墟、と言う程廃れてもいないので、とても不思議な気分でこの街を歩いていた。 住宅街だけ、耳を澄ますと子供の鳴き声が聞こえたりした。でもそれも、直ぐに静かになる。 危険探知と気配探知を発動しているので、魔物が近づいてくるのは直ぐにわかる。 危険探知……案外便利だった。 頑張って?窓から身を投げたおかげである。 これであの時の苦労?が報われた。 おっ!一匹?気配探知に引っかかったぞ! 危険探知はまだこの距離では安全だよ、とでも言っているのか、危険ですよマークが出てこない。 でも、このままでは確実にやられる。 徐々に近づいてきているし。絶対鉢合わせするパターンだろコレ。 隠れる?見つかった時のリスクがな……… よし、では……ちょっとふざけるか。 もしかしたら魔物ではないかもしれないし。 きっと此処でふざけると言う選択をした私は生粋の馬鹿なのであろう、だがこの場合選択は間違っていなかった。 バックから王都で買った青インクー何か色が綺麗だったので買ったヤツを出す。 手から水を出し、インクを垂らした。 その瞬間、水がまだらな青へ変化する。 それらをぐるりと縄なしバンジーした時みたいにまとった。 見た目は………何かでかいスライムである。 図書館で借りた魔物図鑑に載っていたスライムに擬態できるかな〜と思ったらできた。 ただしコレ。唯一の問題点は、前が見えない事である。 気配探知を使って、感覚だけで歩んでいく。 魔物かもしれないヤツと接近中………3メートル、ってなった時に危険探知が危険を知らせてきた。 確定。魔物である。 幸い、恐怖心はないので恐くはない。 なので心臓の音がドクドク言って煩い〜みたいな事はなかった。 あとヤツまで1メートル……… 「何だぁ?ヒトか?」 そんな近くまできてヤツは言った。 ヤバい、バレるか……? どうしよう。絶対絶命ですな。 「あぁ、何だスライムか」 ウィン!勝ったぞ!よーし良く騙されてくれたね、君! 「チッ気にして損した……………」 そう言ってヤツは離れて行く。 緊張した空気が緩み、私も少し余裕を取り戻す。 だが、そう気が緩んでしまったのは良くなかった。 一瞬水のバリアが崩れ、腕が露わになる。 「ん?やっぱりまさかオマエ……ヒトか?」 その後の私の行動は早かった。 本能で動いていたと言って過言でない。 まずは何の魔物か確認……レッドウルフだ! 二足歩行の。赤い毛に狼の頭、そして二本足で立つ、いわゆる人狼?っぽいヤツ。 足でまぁいわゆるレッドウルフの股の間……つまりアレがある場所に向かって足を振り下ろす。 苦しみに悶えるレッドウルフの頭を豪腕スキルを使ってガシッと掴む。 そして「セイッ」と掛け声と共に道路の脇の土に埋めた。 ドカァァアッッッッッッッッッッ と凄い砂埃が舞い、レッドウルフの頭は文字通り土に埋まる。 次に頭を蹴って攻撃………1 2 3 4っと。 手から水を出して水圧を高めるイメージで攻撃する。 ついでにナイフでグサッと刺した。 頭を。 血が辺りに広がる。 血まみれのナイフを持つ私は一見みると狂気に染まっている何かに見えなくも無いが、私は残念な事に正気であるため、罪悪感の様な物が襲ってきた。 吐き気がするってぐらいでは無いが。 これぐらいやったら倒せたかな? でも、少し安心を感じている。 仕方ない、死んでいるかどうかも確かめたく無いので逃げようと思う。 手から水を勢い良く出す。 手から出る水の勢いで前に進む…つまり手をジェット機代わりに使ってその場から逃げた。 ふわりと体が宙に浮き、物凄いスピードで、景色が変わる。 後ろで凄い轟音がすると想い、振り返ってみると、石で軽く舗装された道が水圧で割れていた。 ヤベェ弁償金どうしよう…… でも今はそれどころでは無いから。うん。 仕方なかったと言う事で。すっとぼけよう。 と言うか、この手から出てる水止められないんだけどどうしようか。 そのままいつの間にかバビロンの北門を過ぎて霧の来い沼地へやってきていた。 此処を抜ければ魔女様の家があるらしいが、本当か? 人が住める様には見えない。 手から出る水は止まらないので私はまだ宙に浮いている。 霧へ入った瞬間、気配探知に6匹?ぐらいの魔物が引っかかった。 ついでに危険探知が、危険である危険マークを常時知らせてくる。 獣の唸り声が耳元で響く。 霧の中に入るにつれて、王都の人が言っていた事が分かる気がした。 魔女様の元に行くの正気かって言うのは、魔物が多すぎて、一般人が入ったら死ぬぞ!って事だったんだな。 ヒクッと顔が引き攣る。 恐る恐る後ろを見れば、良くわからん異形が私を追いかけていた。 1匹や2匹では無い。 もう群れである。 緑色したカエルみたいなヤツや、レッドウルフ、紫色の蔦を操るートレント?だろう多分が何匹か。トンボみたいな魔物もいるし。 しかも、見た目がこれまた酷い。 綺麗だったら気分も和むのに。 ハハッッ、この水がいつか止まって、君たちに食われそうになった時は、せめて美味しく食べてね。 おじさん、ありがとう。 最後の晩餐?美味しかったよ。 この世に未練たらたらだけど。 一応、死んでも良いかな〜なんて思ってしまった。 冥途の土産に竜の背から見た絶景もあるし。 はぁっと、このピンチ過ぎる場面に合わない溜息を吐いた。 霧の中でも見える、茜色の空を仰ぎ見る。 本当にどこ行ったのかなぁ、私の安全で楽しい異世界ライフ……
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