第一章

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第一章

第一章 目が覚めると、真っ白な世界に立っていた。 此処はどこだろう。 分からない。 私は今まで、お姉ちゃんとその友達とで 学校からの帰り道を急いでいた筈だ。 周りを見渡してもお姉ちゃんはいない。 そして、お姉ちゃんの友達も誰一人としていなかった。 ただ一人、私だけが此処にいる。 ………………。 さっきまで私は何をしていた? 学校が終わって、友達がいない私をお姉ちゃんが一緒に帰ろうって言ってくれて? 下校中に、あれ? 何だったっけ? 何かあったような………….. とりあえず、帰っていたら………… それで、お姉ちゃんと一緒にいた人達と…… ああそうだ。 突然現れた、白い光にお姉ちゃん達と包まれて。 それで此処に来たんだった。 じゃあ此処は天国?地獄? それとも何かの施設? 私はあの光的なものによって殺された? それとも召喚? なんで私は……此処に来た? いや、そんなことよりも。 食料も水も生活できそうな場所もない。    …………あかん。 生きている気がする限り、死んだことにも死にたくもない。 でもこのままでは確実に死ぬ。 真っ白な世界に一人なだけでも、精神が終わる気がするのだが……? 必死で頭を巡らす。 呑気にしている場合じゃない。 場合によっては死活問題だ。 此処がどこかも関係ない。 とりあえず確かめることは動けるうちに 周辺の様子を見て、あとは壁とかないかどうかかな? あとはこの真っ白な世界を構築している白い砂?のようなものが食べられるかどうかか。 絶対、 何もないところに誰かが閉じ込めたんだとしても、閉じ込めただけでは何も意味が無い気がする。 大体は何か起きる。 そうでは無いなら、 非力な女子中学生が一人死ぬだけだ。 …………それに興奮する変態もいるのか? まあいい。 じゃあこの砂?を試食してみよう。 美味しいかどうかは知らんが。 砂を乱雑に掴む。 そして、はいあーん的なノリで 私が白い砂を試食しようとした時だ。 後ろで、とんでもないぐらいの大音量で 雷が落ちる時と同じような音がした。 耳の奥深くまで音は反響するように鳴り響く。 正直、煩い。 「ちょっと待ちなさい。落ち着いて。 その砂を食べたら貴方、元の世界に戻れなくなるわよ。」 大音量と共に現れた綺麗な女の人はそういった。 白い髪に金色の眼。 まるで女神のようだった。 でも待ってくれ。  今耳がキーンてなって痛いんだ。 そんな時に喋らないで欲しい。 鼓膜が破れかかっているところにトドメを刺しに来ているのか….? それに、今大事な事言わんかった? まだ耳が痛い。 ……………これ鼓膜破れてないよな。 「貴方みたいな行動をとった人は見たことないわね。中々に斬新だったわよ。 最近の子供達は、同じ反応ばっかりするから………..」 子供達? 誰かのお母さんなのか? この綺麗な人は。 と言うか、食料(砂)が….. 食べたら帰れなくなるらしいケドね。 ん?てか、何でそんな事知っているんだ? もしかしてお姉さん誘拐犯? こんなか弱い女の子攫ってどうするんだ..? もしや…………変態……? 「違うわ。   私は神。女神マリアンn….. ズシャァラァァァァァァァァァァァァ 女神様の言葉を遮るように砂埃が舞う。 そして私は、その瞬間土下座をした。 土下座と言うよりは平伏かな? 額を砂の中に沈める勢いである。 ………………。 にしても、いやぁ怖い怖い。 まさか神様だったとは……….。 日本では、そんなに信仰心が厚い人は いない。 でもさ……世界の人口の約7割が 神様を信仰しているんだよ……… それって世界から見ればおかしいのは日本人なワケやん。 もし世界が神によって作られたんなら…? 私の目の前に立つこの人が頭おかしいだけでは無いなら…….? 下手したら消されそうだ。 さっき言葉を遮っちゃったし……。 此処は一つ土下座して許してもらいたい。 見よ!コレが、全身全霊の土下座だぁ! 「土下座一つ…ってね貴方。   私は貴方にお願いしたい事があって呼んだんだけれども。」 女神様?は、どうやら許してくれたようだった。 でも、平凡な女子中学生にお願いしたい事? 何だろうか…..? 何でも良いか。 凄ーく冷や汗が背中でしたっているのはきっと気のせいだ。 この時点で殺されてない事が奇跡かも知れないし…….. 嫌な予感しかしないけど。 嫌な予感しかしないけどっ! 「分かりました。それではお願いしたい事とは…?」 コクンと女神様は頷く。 「随分と、話がスムーズね。  他にもっと質問すべき事があるでしょうに。 まあ、良いわ。」 とりあえず…..と女神様は話を続ける。 「異世界に行って欲しいのよ。」 銀色にも似た白髪が舞う。 真っ白な世界の中、女神様は幻想的にそこに立っていた。 我も忘れて見入っていたが……..。 ……………はぁ。        異世界。          布教しろとかで無く。 うんうん異世界かー異世界ねーふーん。 ………………………………。   っっっって異世界⁉︎?!?!? あったんかいな………… ちなみにその異世界と言うやらはどんな生物がはこびっているんだ….? 人間に人権?的な物あるよな……? ゲームやラノベ的な異世界だったら嬉しいが 文明もそんな無い、言葉も通じない、 しかも食べられる物も意味不明な物しか無い世界は嫌だぞ………… 流石に行きたくない…… でも、まぁコレも試練って言うのか。 神様からの………… 仕方ない。帰しても貰えなさそうだし、 行くか。 渋々頷きたいところだが、不敬に当たりそうなので、大きく頷く。 「はい。それでは、行って何をすれば……?」 女神様はそれに応える。 「本当に話が楽ね。貴女。いつもは貴方の倍は説明に時間がかかるのに…..。」 首を傾げるその様も絵になるな…… じゃなくって。 そうなのか。 確かに急に異世界行けって言われても困惑するだけだもんな。 「御光栄であります。それでは…話の続きをお伺いしても..?」 「何もしなくて良いわ。」   ポンと何事もないように女神様は言った。 だが……..。 だが…………..。 数分後………. へっっっ…………? どう言う事だ…………? いやぁ本当にどう言う事だっっっ? 何もしなくて良いなら私行く意味あるのか..? 需要は?需要は何処にある….? ツッコミどころ満載やなぁ。 やっぱりこの神様、趣味がコアな人…? ってか私さっきから変なリアクションしか心の中でして無いな。 こんな事考えている事がわかったら、 殺される。 バレて無いよな? 心の中読み取れるとかマジで無いよな? でも仕方ない。 誰だって驚く筈で、取り乱す筈である。 …こんな事。 「あるにはあるのよ。  貴方に行って欲しい世界はねぇ、 ラノベ? とかって言う物の世界と同じとして考えて貰って良いわ。まぁそこの魔王? って言う奴がね、世界滅ぼしそうだから止めて貰いたかったんだけどね? その………………ね? 他の貴女と一緒にいた人達に頼んじゃったから、大丈夫なのよ。」 「貴女はそう………それに巻き込まれたって 事かしら……?」 「ごめんなさいね、召喚した時に、 まさか貴方も一緒にいるとは考えていなくて?」 「ああ、でも大丈夫よ。 他に巻き込まれて召喚してしまった子がいるし………」 ふんふん。へぇーーーー。 ふんふんふん。 沈黙。 はっ…………はあ。 なる、ほど? お姉ちゃん達が勇者パーティ的なポジで それに私は巻き込まれた、と………..。 あともう一人ぐらい巻き込まれた奴がいるから大丈夫だと……..。 何もしなくて良い。 でも、異世界行けと。 頭が混乱している。 ってかやっぱり女神様心の中読み取れる系のお方? あとは、聞いておきたいこと……。 そういえば!!!! 「それでは異世界に行くにはどうしたら良いでしょうか?」 行く方法分からないからね。 異世界に行って欲しいと言われても、 どうやって行くか分からないんなら仕方ない。 …………まさか死なないと行けないとか? 行けないんだったら、 出来れば帰して欲しい。家に。 でもそれなら、行けって言わんよなあ。 「ごめんなさいね。 帰す事は、魔王を倒さない限り無理よ。 異世界には私が貴女を連れて行くから大丈夫。 あとは、スキルとか能力は要らないのかしら? 必要とあればあげるわよ。」 ほぉぉぉおマジかっ! マジですかっ!! めちゃくちゃ欲しい!!! 魔法とか使ってみたいし!!!! 空飛んでみたいし!!!!! いょおし、異世界行くぞー!!!! 絶対行くぞーー!!!!!!!!!!!! チート貰えるんだったら行くぞおおおぉぉ! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! そして、異世界生活を満喫してやる!!!!!!!!!!!!!!!! 「要ります。 選べるのであれば、選んでも良いでしょうか?」 「わかったわ。  どうぞこの中から選んで頂戴。  何分でも待つから、じっくり見た方が良い  わよ。」 いょおし、神様から許可は頂いた! じゃあ選ぶぞー!! 目指せチーマーだっ!!! 一時間後………… 「選び終わりました。  それでは、異世界に行きます。」 女神様は待ち侘びたように欠伸を噛み殺すと、いつの間にか出現した魔法陣を指刺した。 「ようやく終わったのね。  じゃあ其処の魔法陣に乗ってくれる?」 そう言われたので、魔法陣の上にのる。 ……………異世界っぽくって良いな。            魔法陣。 「じゃあ送るわよ。でもああ、その前に。  最後に貴女に伝えたい事があるの。」 何だろうか…? 「貴女みたいな、心の中で思っている事と  言っている事が違う人間は沢山いた。貴女もそれかと思ったら、まさか心の中があんなにあべこべだとは… 貴女の事、見守っているわよ。だって貴方、面白いもの。」 チッ そう心の中で、「私」は舌打ちをした。 「嫌いですか?そう言う人間は?」 「嫌いじゃないわよ。ただ、珍しいだけ。  まだ話したかったけど、もうそろそろ時間  だわ。送るわね。」 パァァァァァっと魔法陣が輝き始める。 女神様は最後、僅かに微笑すると、 言葉を続ける。 「貴女が進む道に、光あらんことを。」 光の中で見えた女神様は 今までで一番神様らしく、綺麗だった。 魔法陣の光がより一層強くなった為眩し過ぎて目が開けられない。 光が収まったような気がして、目を開けると 其処はもう白い砂だらけの世界ではなかった。 そして、私こと霜斬椎菜は異世界に来た。  
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