第二章

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第二章  ペルシアナ帝国 眩しい光に目を瞑って居ると、不意に視界が暗くなった。 どうやら、異世界とやらに着いたらしい。 目を開けると、私の目に飛び込んで来たのは王座の様な物に座る女の人。 とても美形だ。 威風堂々とはこの事とでも言う様に座り、睨むとも取れる目付きで此方を見る。 周りに立って居るのは鎧を纏った人々で,皆カラフルな髪色や眼の色をしていた。  隣を見れば、お姉ちゃんとその友達がいる。 後は、見慣れない男子中学生ぐらいの人だ。 この人は多分、私同じく巻き込まれた人だろう。 動きがお姉ちゃん達より挙動不審だった。 私が女神様と話している時お姉ちゃんは居なかった筈なのに、同時に召喚されている。それか私が後からやって(召喚されて)来たかだな。 見渡すと,高い天井やスタンドガラスが目に着いた。装飾がとても綺麗である。 高い天井からは、シャンデリアが飾ってあった。光がスタンドガラスから差し込み,シャンデリアがキラキラと淡い光を放つ。 じっと目をこらすと、 床には何やら紋様が刻まれていた。 この紋様はきっと召喚する時に使用されたのだろう、女神様が描いていた魔法陣とそっくりだった。 異世界みたいってか異世界なのか。 とてもワクワクする。私は異世界オタクなので只今とんでもない興奮に襲われていた。 はっっっ,イカンイカン。 危うくその場のノリで興奮のあまり踊り出す所だった。 私は興奮を抑えて、 見慣れない光景に若干戸惑っているふりをしながら、状況を把握する。 そうしていると、不意に王座に座る女の人はこう言った。 「勇者達よ,よくぞ我が召喚に応えてくれた。歓迎しよう。私はこの国の女王,アトッサだ。」 どうやらこの人は女王様だったらしい。 通りで威圧感が凄いと思った。王座に座るアトッサさん?様?は立ち上がったと思ったら, 赤い燃えるような髪を靡かせて此方に歩いて来た。 「質問したい事はあるか?我が国の事情などは女神様から伝えられているかも知れぬが。」 伝えられてるんか?魔王に世界滅ぼされそうになっている事以外,私は知らないが。お姉ちゃん達は知っているのかな? ただ一つ重大な事が分かった。女神様とアトッサさんは何かしらの方法で通じていると言う事が。 この国に行く前に女神様の元に行って居る事がバレている。 と言う事は私のスキルとかもバレているのか? それは嫌だな。出来るだけ自分の切り札や能力は隠蔽しておきたい。 後で確かめておこう。 思案を巡らせているとお姉ちゃんが口を開いた。 「女神様にこの国の事情は伺いました。 私からの質問としては魔王を倒せば帰れると言う事だそうですが,それは本当ですか?」 この国の状況とやら、お姉ちゃんは知ってるらしい。 そしてやはり、お姉ちゃんも魔王を倒せば帰れるのか。   …………ちなみに帰れる人数に縛りや制限はあるのかな? 無かったら良いんだが。流石に帰る為に魔王争奪戦になったら嫌だぞ。 「本当じゃ。帰還の魔法陣はもう作っておる。」 作ってあるんかい。 って事は魔王倒さなくても帰れるかもしれない…………? 魔法陣盗んで頑張って起動したらワンチャン帰れるのでは?!?! でもその魔法陣を盗んで起動しても帰れるかどうか分からないしな、盗むのは辞めて置こう。 アトッサさんは私達をぐるりと見る。   一人一人の顔を見て、どんな反応をしているか見ている様だ。 お姉ちゃん達は皆不安そうな顔をしている。 此処で興奮した顔の奴がいたら可笑しいよな。急いで私は怯えた様な表情を作る。  「他に質問したい者は居るか?」 手が上がる。 お姉ちゃんといつも一緒にいる男の人だ。 お姉ちゃんの彼氏なのかも知れない。 私は半年ぐらい家で引きこもっていたし、同じ学校とは言えお姉ちゃんとはあまり接点が無い、ってか興味がなかった。 だからこの人の名前も知らない。 …………一応自己紹介してくれた記憶はあるけれど、覚えて無いんだよな。 その人は衣食住に付いてや魔王について、 大体知りたかった全部を言ってくれた。 それに対してアトッサさんは丁寧に一つ一つ答えて行く。 アトッサさんの話はもの凄く長かった。 ふんふんと何となく心の中で聞いているふりをする。 半分ぐらい聞き流し、半分ぐらいちゃんと聞く。要約して簡単にすると、こんな感じか… 基本的な事としては、 衣食住は全面提供、城の中は自由にして貰って構わない,支給品として約10000リド…… 日本円にして約1000 万円を支給する。 ……って事は、1リドが約1000円。 手柄を立てた者は追加金額としてもっと莫大な金額が貰える。 他にも1カ月分の非常食を提供、テントなど魔王を倒すにあたり使う物は全て支給。 講師もつけて貰える。 国が経営している公共施設は全て無料。 などなどと…………… 魔王に関しては詳しい事は分かっていない。 ただ侵略を見る限りうんたらかんたらと。 あと勇者達はそれぞれ別々に動くのでは無くまとまって行動してもらう….と。 スキルや属性は後で個人個人教えて貰う。 そっちの方が戦略を考えやすいからなんだそうだ。 勇者パーティにこのままだと入れられそうだな。それは嫌だ。スキルもバレたく無いし。 それに私巻き込まれだから魔王倒さなくて良いんだよな? それなら,私も質問しないといけない事がある。 私は勇者パーティとは別行動で行きたいのだ。 でもその前に………… やって置かないといけない準備をしないと。 地味な私の得意技と言うか何と言うか…..? 家族にも言っていない私の秘密の一つとして 今この場,役に立ちそうな物がある。 私のチンケな演技力じゃあ女王様、騙し切れないからね。 私は『私』を騙す事が出来る。 だから私は『私』を今から騙して、女王様を騙す。 『私』は女神様に合わなかった。 『私』はとても弱気。 何で召喚されたのかも分からないし、スキルも貰って無い。 とても怖い。どうして自分は此処にいるんだ? 『私』は其れを知らない。 だから『私』は弱い。  勇者パーティに入れた所で足手纏いになるだけ。 だから女王様『私』を…………… そっと目を閉じた。 『私』の目に映ったこの世界は……どう変わった?
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