第二章

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第二章 師匠 目を開けても、暗闇が広がっていた。 顔が痛い。 どうしただろうか。 ……………………そう言えば、枕に顔を押し付けていたっけ。 ガバァッと起き上がる。 私の部屋が見える。 さっきまで枕に顔を押し付けていたせいか、ぼんやり視界が曇っていていた。 段々はっきり見えてた。 何にもないだだっ広い部屋。 私の部屋とは似てもつかない作り。 真っ白な壁がやけに眩しい。 これらは全て私が異世界に来たと言う証拠であるのに、悲壮感はなかった。 さっきまでは絶望…そのくらいまでこの事実が受け入れられなかったのに。 まぁそれは、私が私を変えたからなのであるが。 どっちかと言えばこっちが素である。 天蓋付きのベットからモソモソと起き上がる。 そしてヒョイっとベットから飛び降りると、私は窓を開けた。 暖かい風が部屋の中に流れ込む。 髪が風によって靡いた。 気持ちが良い。 私がいた地球よりも空気が澄んでいる。 いわゆる美味しい空気ってヤツだ。 排気ガスや、地下水の腐臭が漂ってない空気は新鮮だ。 此処は2階の部屋なので、窓から見えた城をぐるりと囲む森が見える。 だからか,風が土の匂いの様ななんとも言えない香りを運んできた。 城壁は白く、レンガ作りとなっていた。 2階とは言え、無駄に天井が高い為、実質マンションの4階位の高さだ。 落ちたら無事ではいられないだろう。 此処から飛び降りたらどうなるんだろうな。 やって見ようかな。 ………………なんつって。 冗談冗談。 やらないとも。 ……………………………。 さて。 今後の事を考えなくては。 頭の中を整理していく。 まず、これから私がやる事は勉強だ。 私はこの世界について知らなすぎる。 言葉は通じるが、物の価値や文字。 後は色々な魔法、世界の社会状況。 まだまだ知らない事だらけで、簡単に騙されそうだ。だから迂闊に行動出来ない。 それに何の知識もそんなに待ち合わせていない私が色々動いても、痛い目に遭うだけな気がするからな。 多少痛い目に遭っておくのも大事だけども。 私は楽して生きたいんだ。 だからこそ異世界を満喫するには知識も必要そうだ。 だからとりあえずは先生を探そうと思う。 沢山の知識を持っている先生を。 それに関して女王様は良いものを渡してくれた。 胸元からブツを取り出す。赤いカードだ。 金色の王家の紋章が入っているソレは、怪しい輝きを放っていた。 これを使えば公共施設全面使いたい放題。城にいる貴族、魔法講師、騎士などには教育に関してで師事をして貰えると言う素晴らしい物である。 私には有り難すぎた。 早速悪用……… ゲブンゲブン利用させて貰う事にしよう。 さて。 問題はどうやってこの部屋から出て先生を探すかだ。 探す前に、出るだけでも重労働なのである。 なるべく女王様などに私の情報が届くのは避けたい。 だから普通にドアからは行けない。 確か、ドアの外には護衛騎士がいるらしいからだ。 多分、外出するにもついてくるだろうし。 出入りする時には必ず見られているし、どこに行くかも聞かれるだろう。 一応、居ない事を考えて女神様から貰った”召喚ボーナス”とかと言う、気配探知能力を作動する。 居なかったら、普通にドアから出て行くか。 いない事を願おう。 天井裏には流石にいないが、やはりドアの前に2人程人がいる。  仕方ない。 では違う方法(ドアから部屋を出る以外の方法)を使うとしよう。 そしてぐるりと部屋を見回した。 天井の通気口は無理そうだ。 天井まで天蓋ベットを伝っていけそうなのだが、頑丈な鉄格子で覆われている。 他には、床に穴を開ける…..無理そうだ。 護衛を気絶…..駄目だな。倒せない。 最終手段…..窓から飛び降りる。 って、いやいやいや。 流石にそれは無いだろう。 死ぬぞ?この高さ。 でもな……それしか部屋からこっそり出る事が出来なさそうだ。 ……………………決して私が此処から飛び降りたいだけじゃあないよ? 自殺希望者でもあるまいし。 ん?なになに? 白い城壁に、人は目立つんじゃあないかって? それは解決済みだ。 私の使える魔法属性は水である。 この属性は応用すれば、幻影を作れるんじゃないかと思って選んだのだ。 これもちなみに、召喚ボーナスとやらで、 初級魔法ならば使える。 勿論、水を操るなどと言ったこともだ。 だから、飛び降りたら水を操って自分自身を隠す。色水を使えばいけそうだ。  インクなども支給されているからな。 水は魔力が切れるまで出せる。 窓から降りる方法は、 ロープ有りだったらいけるかもしれない。 一応、ロープは女王様から支給されている。 万が一ロープが切れたとしても、 国宝とか言ってた割に普通に支給された三本の万能薬エリクサーを使えば、即死で無ければ傷が治るらしいし。 これは降りられる可能性の方が高い。 ニヤッと口元が歪む。 面白そうだ。 やって見るとしようか。 さてロープロープと…… あ、そう言えば一応身代わりを置いておこう。 クレーゼットを開けて大きな人形を取り出す。 支給品のそれは真っ白な人型をしていた。 ちなみに、 これは国宝とか言ってた身代わり人形だ。 2体ある。 壊されない限り魔物等の囮に使えるらしい。 本人に見える気配や幻術を出すそうだ。 一体目…親しみを込めて能面くんと呼んでおこうをベットの上にうつ伏せになる様に置き、布団を被せてあげる。 おやすみ…良い夢を… ッッとふざけてないで、早く起動しよう。 手を人形に翳し、女王様から聞いた起動方法を試す。 「クークラ2号体、組織番号305起動。」 そうすると人形が徐々に変形し、私にそっくりになった。 本来なら、ピンチの時以外使用しないでね!っとかって大臣らしき人が遠回しに言ってた気がするけど、分からなかった事にしよう。 バレたらな。 次は開きっぱなしになっていた同じくクローゼットからエリクサー、ナイフ、例のブツ、ロープを装備する。 装備と言っても、適当に置いてあったポーチに入れて置くだけだ。 中に適当に放り込むと、ポーチを首から下げた。 ん?何か装備品で忘れているような…..? あ,お金だ。 一応マネーも入れておこう。 大金は持っていけないから、何枚かの30リドぐらいをリドが入ってる袋から取り出す。 お財布は…無い。 なのでそのままポーチに入れた。 あとは白インクを出しておく。 最後にクローゼットに人形二体目…これは顔面くんと呼んでおこう。をしまう。 これで装備品等は装備した。 水を手から沸き出すイメージをする。 すると水が手から本当に湧き出してきたので、 慌てて水を浮かせるイメージをしてみた。 此方も水が本当に浮いた。 インクを直に全て入れると、水は白く変色した。 ぐるりと私の周りを足元以外包んでみる。 しっかり包み込めた。 他に仕上げとして、一つ感情を消しておくか。 流石に怖くて降りられない等と言った事態になりたくない。 私は目を閉じると、私を変えた。 よし。これで”恐怖心”が無くなった。 窓の方を見る。 なんだかワクワクしてきたぞ!!!! いよぉし。さぁてと。 行くか!!! なんとも軽率な行動だ。 本来なら警戒してゆっくりロープで降りる方が安全なのに。 だが私は、その場のノリと、気分でぴょんっと飛び跳ねて窓から飛び降りる。 その瞬間、周りを色水で囲った。 只々浮遊感があるだけで、何も感じない。 視界は色水で遮られているからだ。 このまま下に着くギリギリでロープにしがみつけば、無事降りれる筈だ。 筈なので、本当かどうかは誰にも分からない。 でも、腕がめちゃくちゃ痛そうだが、なんとかいけそうだ。 ところが此処である疑問に辿り着いてしまうのが私の悪いところである。 この前無事降りれると信じていれば良かったのに……………… 完全に馬鹿な訳では無いのがキャラのしての玉に瑕と… あれ? ん? ロープ? だが、私はとても重要な事を忘れていた。 そう。忘れては絶対にいけない事を。 お察しの良い方は気づくだろう…私のミスを。
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