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ああ、欲しかった言葉はこれだった……。
このひと言が欲しかったのだ……。
「……で、でも……、同族同士じゃないと、いけないって、……沙雪さんが……」
この前、そう言われた。華乃子では役不足だと、沙雪が言っていた。でも雪月が穏やかに微笑んで首を振る。
「僕は、十年以上前から、番うなら貴女だと決めていたのです。弱かった僕に、やさしさをくれた、貴女が良いのです」
親に忌み嫌われた理由そのことで華乃子を選んでくれるという。人間とあやかしのどっちつかずの自分でも良いと、言ってくれる。子供の頃から殻に覆われ、職業婦人として生きることで鎧を被り、沙雪に会って以来ずっと不安だった心が溶かされていく。溶けて結晶になったほころびは、ぽろりと涙になって頬に零れ落ちた。
「ああ、泣かないでください。貴女に泣かれると、どうしたら良いか分からなくなります……」
「ち……っ、違うんです……っ。は、……初めて、私は私のままで良いんだって、……思えて……」
ずっとお前は『違う』んだ、と言われて続けてきた。お前は私たちとは『違うんだ』と境界線を引かれてきた。
自分のすべてを……半妖だということすら受け入れて、受け止めてくれる。そんな人が、現れるなんて思っていなかった。
ぽろぽろと涙を零す華乃子のことを、雪月はやさしく抱き締めてくれた。強引じゃないその腕が、華乃子の傷付き続けてきた心にとても心地よかった……。
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